第25話:もしも運命なら…
「そんなことがあったんだぁ…。」ファミレスの席に向かい合って座っていた悠乃は、しんみりとした表情でそう言った。
「電波通じないからって、ここ1ヶ月くらい何にも話聞けなかったから…」私は地元に帰って来てすぐ悠乃にメールをした。それが、実家に帰る前に2人で交わした約束だったから。
「麗、変わったね…。きっと前までの麗ならこんな話してくれなかった。」
「そんなことないよ。」
「あるよぉ。あたし寂しかったもん。」少しふて腐れた顔をする悠乃に、私は微笑んだ。
確かに悠乃の言う通かもしれない。前までの私はあまり自分のことを話したがらなかったから。
太陽君に恋して、素の自分でいることに慣れてしまったのかもしれない。それに興味がなさそうだとか、つまんなそうって相手に思われて寂しい思いをさせたくなかった。悠乃が素の自分を見せてくれるように、私も素の自分で付き合いたいと思った。
「麗の気持ちわかるけど…でも、両想いなのに一緒にいれないなんて、やっぱり悲しいよ。」
まるで自分のことのように、泣きそうになりながら悠乃は言った。
「あたしもまずは保育士になる。それまでは恋愛は無しでもいいかな。」
「麗、辛くないの?」悠乃の問いかけに私は静かに首を振った。
「辛いけど、あたしが泣くのは変だと思うんだよね。被害者面してんなって感じだし。もう沢山泣いたしね。」
「本当に無理してない?あたし、麗が強がりなこと知ってるんだから。」
「んー。無理してないわけじゃないけど…今日は大丈夫。もし、辛い時があったらちゃんと悠乃には言うから。」
太陽君は今どんな気持ちでいるのか、考えたら少し悲しくなった。でも、太陽君ならちゃんと前に進んでそうな気がする。そんな考え自己満足にしか過ぎないんだろうけど。
「それにね…。もし、この出会いが運命だったら、またどこかで会えるかもしれないじゃん?だから、あんまり悲しくない。まぁ、こんなこと言って一生会えないかもしれないけどね。」
「きっと会えるよ!だって麗を変えてくれた初恋の人なんだもん!」そう前のめりになって言う悠乃に、私は親指を立てて見せた。『今時こんなポーズ?』なんて2人で笑いながら、しばらく悠乃と話をしていた。不思議と話せば話すほど気持ちが軽くなるようで、ただ好きってことだけがはっきりと自分の中に残っていく気がした。
もしもこれが運命ならまた会える気がするんだ…だから、悲しくないよ。