表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初々  作者: 雪野 空
20/26

第20話:2日前

蛍を見つけてしまった私たちは、もう2人で縁側に座ることはなくなった。着々と帰る日は近づいているのに、全然実感が沸かない。

ただ1日1日、純粋にここにいる時間を楽しんだ。太陽君を避けるわけでもなく、近づこうとするわけでもなく。一定の距離を保って。

蛍を見ることがなくなった分、太陽君は勉強に時間を費やしているみたいだった。私はその姿を見る度、邪魔になるなよと自分に言い聞かせた。太陽君の夢を壊したくない。だから、迷惑になるようなことはしない。告白だってしない。その日になったらちゃんと笑顔で帰るんだ。

決して私は無理に、好きでいることを辞めようとは思わなかった。でも、あっちに帰ったら時間をかけて太陽君を忘れるつもりでいた。

それが1番だと思った。

「飯だぞ。」ノックもしないでドアを開けると、太陽君はそう言った。

「最近ノックしないよね。着替えてたらどうするの?」私は手に持っていたシャープペンの芯を縮ませ、筆箱に閉まった。

「…勉強?」

「あたしだって一応受験生ですから。」

「絶対受かれよ。」なんだか真剣に応援されて私は返事に困った。だって太陽君なら絶対『落ちろ』って言うと思ったから。

「太陽君も頑張ってよ?」

「あんたに言われなくても頑張ってるよ。」近くに来た私の頭を小突きながら、太陽君は偉そうに言った。

「絶対今回だけはあそこに入る。受かりたい理由があるし。」

「うん。」…知ってるよ。私もお父さんが死んだとき、何も出来ない自分が情けなく感じたなぁ。太陽君もきっと悔しくて情けなくて、沢山泣いたんだろうね。

そしてその気持ちから立ち直れたのは、医者になるっていう夢を見つけたからなんだよね。…応援しなくちゃ。

「…あんたさぁ、英語得意なんだよな?」前を歩いている太陽君が突然そう言った。

「うん、まぁ、一応。」

「後で教えて。あんたがここにいれんのもあと少しだし。」ずきっときた。私が目を背けてきたことを、太陽君があっさり言ったから。

ちゃんとわかってるつもりなのに…まだ、もっとって、どうしても思っちゃうよ。

太陽君はどうしてそんな平気そうな顔してんのかな。私がここからいなくなること、なんとも思ってないからだよね。

叶わない恋だってわかってても辛いよ…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ