第18話:初恋だから
「ごめん…ね。」鼻をすすりながらそう言った私に、太陽君は黙ってティッシュを渡した。
…恥ずかしい。こんなに取り乱したことなんて今までに無い気がする。
私は鼻をかみながら横目で太陽君の表情を伺った。怒ってる感じでは無いけど…迷惑に思ってるんだろうな。
私は自分のした行動にため息をついた。突然泣かれたら、どうしたらいいかわかんなくなるのが普通だと思うし。
でも…太陽君はしゃがみ込んだ私の手を引き、何も言わず縁側に連れて来た。それは私の理想そのものっていうか…すごくその行動がかっこよく感じたんだ。今だって私が落ち着くまで傍にいてくれるし。
こんなことされたら、諦められなくなっちゃうじゃん。
「落ち着いた?」
「あっ、うん。突然泣いてごめんね。もう大丈夫だから。」無理に私が笑顔を見せると、太陽君は小さくため息をついた。
「ほんとにごめん。泣かれるの嫌いだって言ってたのにね…。」
「別に嫌いじゃねぇよ。困るだけ。」
「ごめん。」私はまた泣きそうになるのを必死に堪えた。これ以上嫌われたくない。…どっちにしろ、あと1週間しか一緒にいれないけど。
「あんたは少しくらいなら泣いてもいいんじゃない。普段我慢してそうだし。」
「で、でもっ…」
「理由は別に聞かないけど、あんたが泣くって相当のことだと思うし。」相当のこと…そうだよ。太陽君を諦めるなんて難しすぎるんだ。私はそんな器用な人間じゃない。不器用な人間だからこそ、いろんなことに無関心になって、面倒なことを避けて通って来た。
だから今回も…。今はまだ諦めることは出来ない。きっとここを離れたら少しは太陽君への思いも消えるから…だから、今はまだ好きでいたい。好きでいることを許してほしい。
私の初めての恋だから。