第16話:邪魔者
4人でまわり始めてから30分が経った。なんだか知らないけど、太陽君はさっきの女の子に独り占めされて…私はよく知らない太陽君の友達と後ろを歩いていた。
「楽しそうっすね。」
「そうですね。」
「…。」
「…。」楽しそうに話す太陽君と女の子の後ろで、私たちは他人行儀な会話をしていた。
それよりも、この人…あの子のことが好きなんじゃないかな。時折悲しそうな、悔しそうな目で2人を見ている。だいたい、2人で祭に来てるんだから、なんらかの関係があったっておかしくないし。…切ない片思いみたいだけど。
「新田。トイレってどこ?」太陽君は突然振り返ってそう言った。
「あっち。」
新田さんの指差したほうへ、太陽君は何も言わず歩いて行く。
「えっ、太陽く…」
はぁ。3人とか気まずいんですけど…。私はこっそりため息をつき、肩を落とした。
「わり、俺も。」
そう言うと、新田さんは太陽君の後を追い掛けるように走って行った。
…嫌な状況。
「太陽とどういう関係?」女の子はさっきまでとは違う、低いトーンで問いかけてきた。
「親戚…かな?」
「どこの人?」
「まぁ、ここらへんじゃあないとこ。」
「ふぅん。」
って言うか何でこんなに偉そうなんだろう…。怒りってあんまり感じたことないけど、少しいらっとするなぁ。
「太陽のこと好きなの?」
「…。」ストレートな質問に私は答えを返さなかった。そんなこと、関係ないんじゃないかなぁ…。
「太陽、今医者を目指して頑張ってるの。…親がいないことは知ってるでしょ?」
「…うん。」確か3年前に葬式の連絡が来た。私は休みを取っていたものの高熱が出て、結局母だけが葬式に出たのだった。
「この町にはおっきな病院もないし…そのときはどうすることもできなかった。暫く落ち込んでたけど、最近ようやく医者になるって目標を見つけて元気になったの。だから私は太陽の邪魔をしない。太陽が受験勉強を一生懸命やってることも知ってるし、今は告白なんかしない。だけど、合格が決まったら必ず告白するよ。あんたは突然やってきて、太陽のこと何も知らないくせに太陽の人生めちゃくちゃにする気?太陽が好きなら手を引いて。どっちにしろ、夏休みが終わればいなくなっちゃうんでしょ?難しいことじゃないと思うけど。」
「…。」私は何も言えずにいた。何も言えなかった。
心の中に大きな穴が開いたみたいでスースーする。
難しいことじゃない?…そうなのかな。私にはもう諦めかたなんてわかんない。
今まで諦めたことなんてないし、本気になったことすらなかったから。
…でも。手を引かないと太陽君の重荷になるんだね。「…あたしは実家に住んでるだけ。」私も少しきつめに返事をした。




