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初々  作者: 雪野 空
16/26

第16話:邪魔者

4人でまわり始めてから30分が経った。なんだか知らないけど、太陽君はさっきの女の子に独り占めされて…私はよく知らない太陽君の友達と後ろを歩いていた。

「楽しそうっすね。」

「そうですね。」

「…。」

「…。」楽しそうに話す太陽君と女の子の後ろで、私たちは他人行儀な会話をしていた。

それよりも、この人…あの子のことが好きなんじゃないかな。時折悲しそうな、悔しそうな目で2人を見ている。だいたい、2人で祭に来てるんだから、なんらかの関係があったっておかしくないし。…切ない片思いみたいだけど。

「新田。トイレってどこ?」太陽君は突然振り返ってそう言った。

「あっち。」

新田さんの指差したほうへ、太陽君は何も言わず歩いて行く。

「えっ、太陽く…」

はぁ。3人とか気まずいんですけど…。私はこっそりため息をつき、肩を落とした。

「わり、俺も。」

そう言うと、新田さんは太陽君の後を追い掛けるように走って行った。

…嫌な状況。

「太陽とどういう関係?」女の子はさっきまでとは違う、低いトーンで問いかけてきた。

「親戚…かな?」

「どこの人?」

「まぁ、ここらへんじゃあないとこ。」

「ふぅん。」

って言うか何でこんなに偉そうなんだろう…。怒りってあんまり感じたことないけど、少しいらっとするなぁ。

「太陽のこと好きなの?」

「…。」ストレートな質問に私は答えを返さなかった。そんなこと、関係ないんじゃないかなぁ…。

「太陽、今医者を目指して頑張ってるの。…親がいないことは知ってるでしょ?」

「…うん。」確か3年前に葬式の連絡が来た。私は休みを取っていたものの高熱が出て、結局母だけが葬式に出たのだった。

「この町にはおっきな病院もないし…そのときはどうすることもできなかった。暫く落ち込んでたけど、最近ようやく医者になるって目標を見つけて元気になったの。だから私は太陽の邪魔をしない。太陽が受験勉強を一生懸命やってることも知ってるし、今は告白なんかしない。だけど、合格が決まったら必ず告白するよ。あんたは突然やってきて、太陽のこと何も知らないくせに太陽の人生めちゃくちゃにする気?太陽が好きなら手を引いて。どっちにしろ、夏休みが終わればいなくなっちゃうんでしょ?難しいことじゃないと思うけど。」

「…。」私は何も言えずにいた。何も言えなかった。

心の中に大きな穴が開いたみたいでスースーする。

難しいことじゃない?…そうなのかな。私にはもう諦めかたなんてわかんない。

今まで諦めたことなんてないし、本気になったことすらなかったから。

…でも。手を引かないと太陽君の重荷になるんだね。「…あたしは実家に住んでるだけ。」私も少しきつめに返事をした。


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