第13話:魅力的になりたい
今日も天気は晴れ。最近は暑さにも慣れ、畑仕事もちゃんとこなせるようになってきた。一つ一つ太陽君に教わりながら…おばあちゃん達と笑いながら、そうやって仕事をするのはすごく楽しい。
今はここで過ごす毎日が愛おしくてしょうがないよ。
「いいものやるよ。」そう言って太陽君は、にやにやしながら近づいて来た。嫌な予感…。
「わ゛っ。」太陽君からいも虫を投げられ、私は変な声を上げた。
私の奇声が面白かったのか、太陽君は腹を抱えて笑い出した。
「ちょっと、これ拾ってよ。」
「怖ぇーの?」馬鹿にしたような顔で太陽君は言う。
「怖いっていうか…触りたくない。」
「にしても今のリアクションはねぇわ。」
「可愛くなくてすみません。」私はぷいっとそっぽを向いて、嫌味ったらしくそう言った。
「怒んなって。」太陽君は私の頭を軽く殴ってからいも虫を拾った。そのいも虫を畑から離れた草村目掛けて投げ飛ばす。これって生殺し…?
「あーぁ。いも虫に呪われるよ。」
「あれじゃあ死なねぇよ。呪われるとしたらあんただな。…奇声あげたし。」太陽君は必死に笑いを堪えてたみたいだけど、肩は細かく揺れていた。
「そんなに変な声じゃなかったよ。」
「俺的につぼ。あんたおもしろいな。」
たまには面白いじゃなくて、可愛いとか言われたいんだけど…。太陽君はどんな行動を可愛いと思うんだろう。
今まで私は男の人にどう思われようと関係なかった。そういう私でもいいと言う人がいたから付き合って来たし、無関心な私に愛想を尽かされたから別れた。相手のために自分を変えることは好きじゃなかったし、素の自分と合わない人なら無理に付き合わなくてもいいと思ってたから。
でも、太陽君が気になり出してからちょっとずつその気持ちは変わって来た。太陽君に可愛いって思われたいし、好きになってもらいたい。だから、もっと魅力的な女にならなきゃって思う。
恋をすると女は綺麗になるって言うけど、今はそれがよくわかる。
「ここに来たのがあんたで良かった。」
「えっ?」太陽君のセリフを思わず私は聞き返していた。だって…今のめちゃめちゃ嬉しいから。
「なんでもねぇよ。」太陽君は小麦色の頬を、少しだけ赤く染めて下を向いた。