第12話:嫌いじゃねぇよ。
「ねぇ。何で女の子好きじゃないの?」縁側で蛍を待っていた私は、隣に座っている太陽君に問い掛けた。
「めんどくさいから。いちいち泣いたり怒ったり。」太陽君の返答に私はぎくっとした。だって…私は最近いちいち怒ったりしてるから。やっぱ、そういうのってめんどくさいんだ…。
「あ、あんたは別だけどね。」私が落ち込んでいるのに気付いたのか、太陽君は前を向いたままそう言った。
「あんた本気で怒ってるわけじゃねぇだろ?」
「まぁ、そう…だけど…。」
「あんたのことは嫌いじゃねぇよ。」太陽君はそう言って背伸びをしながら寝そべった。私はなんだか恥ずかしくて太陽君の顔を見れないでいた。だって…今のってちょっと嬉しいセリフなんじゃないかな?
「からかうと面白いし、暇つぶし的な?」
「えぇ?!そういうこと?!」私が思わず振り返ってそう言うと、太陽君は小悪魔っぽく笑っていた。本気なんだか冗談なんだか…。私はため息を一つついて空を見上げた。もう何回か見たけど、本当に綺麗な星空。やっぱり田舎ってこういうところがいいんだろうな。
「どんな子が好き?」
「あー?何だよ、突然。」
「なんか気になって。」
「んー。」太陽君は眉間にしわを寄せて、しばらく唸っていた。
「わかんね。」そして、悩んだ結果の答えがこれ。
「えっ、何で?」
「俺、人好きになったことねぇし。」
「そう、なんだ…。」嬉しいような悲しいような答え。もし、私を1番に好きになってくれたらなぁ…。太陽君に彼女でもいてくれたら、きっとこの気持ちは萎んでいってくれるのに。どんどん好きになってる。
人を好きになるのってこんな感じなの?少しでも長く一緒にいたいって思ったり、くだらないことでも知りたいって思ったり…。隣にいるだけでこんなにドキドキするものなんだ…。
私、今まで何してたんだろう。付き合ったってうまくいかないのは当然だ。私が相手のことをちゃんと好きじゃなかったんだから。
「いい恋、できるといいね。」私がそう言うと
「ん。」と短い返事が返って来た。