第11話:猿っぽい
暑い…とんでもなく暑い。帽子被ってくれば良かったかな…。
畑に着いた私は太陽君の教え通りにトマトを収穫した。畑はとんでもなく大きくて、すぐ終わると思っていた仕事は何時間も続いた。正直、暑くて辛かったけど弱音を吐く気にはならなかった。
太陽君に面倒だって思われたくなかったし、元々何かを途中で投げ出すのは、あまり好きじゃないから。
「あんた頭ヒリヒリしてない?」急に日蔭ができたと思ったら、いつの間にか太陽君が近くで立っていた。
「ヒリヒリ?」
「頭の割れ目真っ赤だけど。」
「えぇ?!」私はびっくりして両手で頭を隠した。
「馴れないことすっからだろ。」
「うっ…。」
私がしゃがみ込んで唸っていると、太陽君は自分の首にかけていたタオルを私の頭に落とした。
「…?」
「巻いとけば?」
「……。」私はタオルを縦に細くたたみ、おでこに当てた。
「なんでハチマキ風だよ。」
「え゛っ…」自分のしたことが間違いだと気付いて、私は顔を真っ赤にした。どうやら太陽君はつぼに入ったらしく、お腹を押さえて笑っている。
「こうだろ。」そう言って太陽君は私の手からタオルを奪い、広げた状態で頭の上に乗せた。
「…ぷっ。泥棒みてぇ。」タオルの端と端を鼻の近くで結んで、太陽君はまた大笑いした。
「人の顔で遊ばないでよ。」私は鼻の下の結び目をほどき、少し怒ったように言った。本当は全然怒ってなんかいない。そんなことより、太陽君がこんなに笑ってくれたことの方がよっぽど嬉しかった。
「それじゃあ、タオル落ちんだろ。ちゃんと結べ。」今度は顎の下でタオルを結ぶ。
「…。」
「ぶぶっ。すっかり田舎もんだな。」
「もうっ。」私はそれをほどかずに、またトマトを取り始めた。
「あんた、猿っぽいな。」未だに笑ってる太陽君は腹を押さえながらそう言った。
「っぽくない!」せめてもっとかわいい動物に例えてほしかった…。兎とか猫とか。私がこっそり落ち込んでいると、笑い終わった太陽君が
「怒んなよ。」と言った。
「別に。」しれっとした態度で私は言い放つ。
「いいじゃん、猿。俺好きだよ。」私の顔を見てまた面白くなったのか、太陽君は必死に笑いを堪えながら言った。
全然意味は違うのに、太陽君の言った『好き』って言葉に思わずドキッとした。
なんか、馬鹿みたい。
恥ずかしいなぁ…。