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初々  作者: 雪野 空
11/26

第11話:猿っぽい

暑い…とんでもなく暑い。帽子被ってくれば良かったかな…。

畑に着いた私は太陽君の教え通りにトマトを収穫した。畑はとんでもなく大きくて、すぐ終わると思っていた仕事は何時間も続いた。正直、暑くて辛かったけど弱音を吐く気にはならなかった。

太陽君に面倒だって思われたくなかったし、元々何かを途中で投げ出すのは、あまり好きじゃないから。

「あんた頭ヒリヒリしてない?」急に日蔭ができたと思ったら、いつの間にか太陽君が近くで立っていた。

「ヒリヒリ?」

「頭の割れ目真っ赤だけど。」

「えぇ?!」私はびっくりして両手で頭を隠した。

「馴れないことすっからだろ。」

「うっ…。」

私がしゃがみ込んで唸っていると、太陽君は自分の首にかけていたタオルを私の頭に落とした。

「…?」

「巻いとけば?」

「……。」私はタオルを縦に細くたたみ、おでこに当てた。

「なんでハチマキ風だよ。」

「え゛っ…」自分のしたことが間違いだと気付いて、私は顔を真っ赤にした。どうやら太陽君はつぼに入ったらしく、お腹を押さえて笑っている。

「こうだろ。」そう言って太陽君は私の手からタオルを奪い、広げた状態で頭の上に乗せた。

「…ぷっ。泥棒みてぇ。」タオルの端と端を鼻の近くで結んで、太陽君はまた大笑いした。

「人の顔で遊ばないでよ。」私は鼻の下の結び目をほどき、少し怒ったように言った。本当は全然怒ってなんかいない。そんなことより、太陽君がこんなに笑ってくれたことの方がよっぽど嬉しかった。

「それじゃあ、タオル落ちんだろ。ちゃんと結べ。」今度は顎の下でタオルを結ぶ。

「…。」

「ぶぶっ。すっかり田舎もんだな。」

「もうっ。」私はそれをほどかずに、またトマトを取り始めた。

「あんた、猿っぽいな。」未だに笑ってる太陽君は腹を押さえながらそう言った。

「っぽくない!」せめてもっとかわいい動物に例えてほしかった…。兎とか猫とか。私がこっそり落ち込んでいると、笑い終わった太陽君が

「怒んなよ。」と言った。

「別に。」しれっとした態度で私は言い放つ。

「いいじゃん、猿。俺好きだよ。」私の顔を見てまた面白くなったのか、太陽君は必死に笑いを堪えながら言った。

全然意味は違うのに、太陽君の言った『好き』って言葉に思わずドキッとした。

なんか、馬鹿みたい。

恥ずかしいなぁ…。

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