第10話:ハマっちゃいそう
昨日の夜、結局蛍は現れてくれなかった。意外と最後まで粘ったのは太陽君の方で…なんだかちょっと嬉しかった。
部屋に戻ったのは、確か12時近くだったと思う。スイカを食べながら蛍を待ってる時間、太陽君とはあまり会話は無かった。でも、それは決して嫌な雰囲気とかじゃなくて…なんだか妙に落ち着ける時間だった。
太陽君はちょくちょくカンに障ることを言ってくるけど、本当は優しい人なんじゃないかなって思う。
朝ご飯を食べ終わった後、玄関で靴を履いている太陽君を見つけた。
「どこ行くの?」太陽君は後ろを振り向かずに
「畑。」と言った。
「…あたしも連れてって?」
「あ?」さすがに今回はびっくりしたのか、振り向いて私の顔を覗き込んだ。
「え、あたしじゃ役に立たない、とか…?」
「いや、役に立たないどころか邪魔だけど。」
「ひどっ。」
「まぁ、いいや。連れてくから髪だけでも結んで来たら?」
「…うん。」所々気になる台詞はあったけど、私は素直に返事をした。太陽君がそういうことを言ってくるのは照れ隠しだと思うから。太陽君ともっと話したいな。もっと太陽君のこと知りたい。こんなワクワクする気持ち初めて。
髪を結んだ私は玄関で待ってる太陽君に駆け寄った。太陽君は何も言わずに歩き出す。私はその後ろを黙って歩いた。
日に焼けた小麦色の肌とか、ごつごつした細長い指とか、思わず抱き着きたくなるような広い背中とか…なんかかっこいいなぁ。自然体で男らしい人。考えれば考える程、ハマってく。
なんか…やばいかも。