04.即興小説、お題「初めてのおっさん」
即興小説トレーニング
お題:初めてのおっさん 必須要素:1000字以上 残り時間:120分
おっさん☆クライシス
おっさんは、初めてだった。
「うう、ひ、ひどいよぉ……こんなことするなんてぇ……」
こんなことを言っているが、おっさんである。可愛い女の子ならまだしも、これがおっさんとなると無言でグーパン決め込むレベルである。
「へっへっへ……おっさん、こんなところに来ちまったのが運の尽きだぜ」
一方こっちは美少女だ。到底女ともいえない口調だが、こういった乱暴な口調でビシバシするのを二次元ではご褒美というらしい。
「わ、わたし、こんなことになるとは思ってなかった……」
「そんなこと言ったって、お前、喜んでたじゃないか……ほら、この写真を見ろよ」
写真を見せつけられ、おっさんの顔が歪む。おい、こら、鼻を垂らすんじゃない!お前のそれはご褒美ではない!汚い顔面を晒すな!
「う、うう、違う、違う、こんなの私じゃない、私じゃないよお」
「ノリノリでやってたくせに、あんなに皆に見られて、興奮してたんじゃないのか?」
おっさんを責める美少女の言葉に、熱が入ってきた。美少女は生粋のドSだったのだ。ドMのおっさんとの相性は最高だった。
「いやあ、いやあ、言わないでぇ!」
「ぐへへ、じゃあしょうがねえな、ほら、鏡見ろよ」
そういって美少女は鏡を見せた。
「ああ、嘘、そんな……わたし、笑ってる……」
「なんだかんだ言って、体は正直なんだよ。いい加減、認めちまえよ」
耳元で囁きつつ、ついでに耳たぶを甘噛みする美少女。それによがるおっさん。
「はぁぁ……も、もうダメ、このままだと、」
「このままだと?」
「癖に、なっちゃう」
「なっちゃえばいいじゃん」
それは、悪魔のささやきだった。今までおっさんをがんじがらめに縛っていた、社会的束縛やら世間体やらが、崩壊した瞬間だった。
「ああ、ごめんなさい、父さん、母さん、わたし……今日から、女になります」
「上出来だ。ようこそ、あべこべの世界へ」
こうして、ここに一人、一人の変態が誕生した。
おっさんは、自身がまとう魔法少女のコスプレ服をギュッと握りしめ、扉の前に立った。
男装の美少女が、手を差し伸べてくれる。
それをおっさんは力強く握ると、二人は扉の向こうへと消えていった。
これが後に、「こんなにかわいい子が、おっさんのはずがない!」と言われるほどの女装おっさんの誕生になるとは、まだ誰も知らない。
ここまで981字、1000字にまで足りないのでちょっと付け足す。
いくら女装に目覚めていても、おっさんの性対象は女性なので、なんやかんやあって自分を目覚めさせてくれた男装美少女と結婚しました。めでたしめでたし。