決戦3
重厚な扉の向こう側
黒いデスクと革のイス
分厚い本の大量に詰まった本棚に囲まれたデスクに向かう中年の大男
JCP最高統率者、通称「大統領」フィリップ・モリスは侵入者である煙に向かって言った。
「そろそろ来ると思っていた・・・七星、煙」
煙の戦争も、今始まろうとしていた。
「君が七星 煙で間違いないかね?」
フィリップ・モリスは社交用の口調で話しかける。
「そうだ」
「何故こんなことをしたのかね?」
「煙草の値を上げようとするからだ」
「単純明快、良い答えだと思うよ。だが本当にそうか?」
「・・・・・・あんた達は何にも分ってなかった」
煙は語りだす
「未成年期の喫煙による脳の能力制限部位破壊に伴っての超能力の開眼…これをあんた達はあるものとして値上げを行おうとしている」
「それが悪いかね?」
「悪いさ、何故俺達能力者は今まで蔑ろにされてきた?それはそんな事実がないものとして処理されていたからだ」
苦悩を
「俺だけじゃない。すべての能力者は能力者であると言うだけで畏怖される、そして今回だ」
能力者としての苦悩の日々を
「 能力者はいる、故に増やさぬように未成年では手が出ない値段にしよう。能力者 は危険だから・・・この発表のせいで今まで非公式だった能力者の情報が公式になっ たんだ!能力者は危険だと、忌むべき存在だと言う共通認識が生まれたんだ!」
「だから、どうだと言うのだね?事実君達は今、ここにいる。それは能力を使ってだ、それも非はそちらにある」
「革命は、成功すれば善悪もひっくり返る」
「変わらんよ、何もな」
「変わるさ、だから俺はあんたを倒して煙草の値上げをやめさせる!」
「できるものならやってみるが良い」
†
響side
「これでどうだろう、ねぇ!」
霊芝は金色の金属バットを投擲する
「くぁ!」
「あぅ」
「あっ…」
それは"三人"の響に当たり、響は霧散する
「隠れてばかりではどうしようもないよねぇ?君は時間を稼ぐだけでどうにかなるとでも思っているのかねぇ?だったらそれは甘いと言っておくよねぇ」
「そうはおもっていませんよ、ですが僕は攻撃に向いた能力者ではないんです。ですから、今は待ちですよ」
「そうやって言っていられるのもいつまでだろうねぇ?あまり余裕を見せていると寝首をかかれる原因になるんだよねぇ」
これほどの会話をしながらでも霊芝は攻撃の手を緩めない。
そして響も幻術と幻影をうまく使い避け続ける。
「そんなことは百も承知ですよ。ですが勝利を急いでは何にもなりません、待ちの姿勢とは大事なものですよ」
「とはいえ私もそう長々とこんないたちごっこを続けるわけにはいかないんだよねぇ。完全に千日手だし・・・ねぇ!」
「そうでっ!がぁ!!?」
いきなり何もなかった場所から響が殴り飛ばされる。
「がっ、ぐぅ!くっ、一体どうやって僕の居場所を・・・・・・?」
「君はねぇ、多分煙で分身を作って、熱で光の屈折率を変えて身を隠してると思うんだよねぇ?だから分身を殴っても何の感覚もない訳なんだよねぇ。けれど熱を使っているから君の周りだけ気圧が上がりちょっとした上昇気流とその周辺でのダウンバーストが起こっていたんだよねぇ?そこから先は非常に簡単だよねぇ?煙がどこに向かいどこでダウンバーストに巻き込まれるのかを観察すれば中心にいる君の事はすぐに見つけられるわけなんだよねぇ」
一気に解説し、すべてを言い尽くす。
そして、それに響は驚愕する
戦闘時間は長くても20分、たったそれだけの時間で自分の能力をほとんど看破されてしまったのだ
当たり前であろう。
「この短時間で、そこまで観察しながら僕と戦っていたんですか・・・!?」
「その通りだねぇ、なんと言っても君は能力者だからねぇ。油断なんてまったくできなかったわけなんだよ・・・ねぇ?」
「くっ・・・!」
相手が油断している、そうあってほしいと響は思っていたのだ。
油断は更なる油断を誘い、油断はミスを生み、ミスは敗北を生む。
故に、多少でも油断してくれればと、そう思っていた
だが、結果は真逆
こちらが油断し、そしてミスをした
このままでは、負ける。
「けど・・・」
「・・・まだ立つんだねぇ」
「僕は、負けられませんから」
バンッ!!!
瞬間、霊芝は何かに吹っ飛ばされる
「ぐぅっ!がっ…ぁ……」
吹っ飛ばされた霊芝は壁に激突、膝をつく形で擦り落ちる
「な、にを・・・したのかねぇ・・・?」
「僕の能力は基本的には戦闘には向きません、ですが応用すれば結構いろんなことができるんですよ」
「いろんなこととは何かねぇ・・・?」
「僕の能力は分身を作ることでも姿を隠すことでもなく『煙と熱を操ること』これは言ってしまえば大気の滞留を変え、熱によって風をも操作する能力です」
「あぁ・・・なるほどねぇ・・・」
「ご理解いただけましたか?まぁ一応説明するなら、僕は貴方によって破壊され待っていた粉塵を熱による風の操作で一箇所に集め、瞬間的に熱量を上げ粉塵爆発を簡易的に起こしたんです」
「よく、そんなことを思いついたねぇ?まったく・・・頭がいいのはよくないことだ・・・ねぇ・・・・・・」
そうして、ゴールデンバット峰霊芝は気絶し
響の勝利が確定した。
「さて、煙はどうなってるかな?いや、敷島さんの方が心配…かな」
side out




