作戦前
妖艶な紅色のタイルで統一されたバスルーム
勢いよく湯を噴出すシャワーを浴びる一人の裸族
JCP最高統率者、通称「大統領」フィリップ・モリスは夢想(妄想)していた。
「あ~・・・どこかのバカが漫画みたいなノリで俺のとこまで殴りこみにこないかなぁ・・・・・・」
それが事実数日後に起こるとは露知らず呟いた。
ぶぇっくしぇぁっ!!
「早く上がろう」
裸族。
†
「悪巧みの算段はついたか?」
ベースから皆が帰った後、不意に父、大和が話しかけてきた。
「悪巧みって言われたら実も蓋もないな・・・けど、大丈夫だと思う」
大和の方は見ずに煙は答える。
「そうか、何をする気かは知らんが・・・やるからには成功させろよ?物事勝って何ぼだ」
ニカりと少年のような笑みを浮かべた大和はそれだけ言って立ち去ろうとする。
「親父・・・・・・」
「なんだ、息子」
「ありがと・・・俺、頑張ってくるわ」
「おう、そうしろ」
二人はその場で煙草を取り出しまったく同じ動作で火をつけ一息つくと大和は部屋から出ようとする。
「お休み、親父」
「あぁ・・・お前も早く寝ろよ」
バタンッ
扉が閉まり部屋には煙と静寂だけが残る
「寝よ・・・・・・」
結局、二人は一度も目をあわせなかった。
†
「準備完了・・・行きますかね」
誰にでもなく呟く煙。
「早いね。もう行くんだ?」
だがその独り言に言葉を返す者が・・・・・・
「さくら・・・お前どうして」
集合時間は口頭で二人にだけ伝えたはずだ
あの二人が話すとは考え辛い・・・では何故今ここにさくらがいる?
「分るよ、何年エーくん見てると思ってるの?」
「・・・はぁ、敵わねぇなぁさくらには」
溜息を吐きながらもその顔は笑みに染まっている。
「ちゃんと、帰ってきてね?」
「勿論だ、きちんと帰ってきてやる」
「うん、早く帰ってきてよ?私もう待ちくたびれたんだから」
少し違うニュアンスのこもった言葉。
「・・・・・・五体満足に帰ってきて最初に抱きしめてやんよ」
「それだけ?」
「・・・その先は、帰ってきたら教えてやるよ。だから待ってろ」
「うん、待ってる」
「じゃあ・・・な」
手を上げる。
「いってきます」
手を振る。
「いってらっしゃい」
朝日のなか二人はそれだけで別れた。




