表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

一 芸能で戦う国

 海は、いつもと変わらず凪いでいた。


 水平線の彼方に浮かぶ黒雲が、もう引き返せないところまで迫っていると気付いても、決して海は慌てない。騒ぎ立てるのはいつも人だ。


 一六〇五年――大和では関ヶ原の戦が終わり、江戸を軸に新たな国の枠組みが築かれようとしていた頃。


 首里城の評定所ひょうていじょは戦々恐々の合議に明け暮れ、琉球王府の役人たちは大和から届く書簡の一字一句に震えた。


大和やまとが攻めてくる」

「軍のない琉球はみんの援軍に頼るしかない」

「しかし今の明に、海を渡って派兵するほどの余裕はないぞ」

「大和の侍は倒した敵の鼻をいで集めるらしい」

「琉球は終わりだ……」 


 大和、明。二つの大国の狭間で揺蕩たゆたう小舟、それが琉球だ。片方が少しでも動けば巨大な波が生まれ、一息に飲み込まれてしまう。



 同じく首里城、御内原うーちばらにて、王妃が言った。


「もちろん戦うわ。浜辺のかにだって追い詰められたらはさみを振り上げるもの」


 周りの女官たちは慌てて首を振る。


「王妃さま、琉球は戦えません。士族は百年も前に武器を没収され、帯刀はおろか屋敷で刀を保管することすら許されておりません。戦争の経験者はすでに引退した年寄りばかりです」


 王妃は勢いよくお猪口をあおり、古酒クースーを喉に流し込んだ。


「琉球の戦いは刀をぶつけ合うことじゃない。唄と踊り、言葉と所作。島々が積み上げた『美しさ』こそ、刀に代わる琉球の武器よ」


 呆気にとられる女官に、王妃が命じる。


踊奉行おどりぶぎょうを呼びなさい。島々をくまなく回って踊りの才を持つ者を集めるの。琉球の戦いとは――芸能外交よ」



 これは、とある少女の踊りが一国の未来を動かした物語である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ