第7話 勝てばよかろうなのだ
しばらく、耳が痛いほどの静寂が続いた。
そして──その沈黙をぶち壊すように、男が腹を抱えて笑い出す。
「はっ……マジかよコイツ……ダッセぇ!」
それにつられ、周りの冒険者たちも次々と爆笑を始めた。
まるで見世物にでもなった気分だが――構わない。
バカにされようが、情けないと笑われようが、生き残れば俺の勝ちだ。
……そう思っていた、その矢先。
「でもよ、やっぱダメだわ。お前は殺す」
なん……だと……?
「テメェみたいなカス、ここで死んどけよ」
さっきまで笑っていた野次馬たちも、手のひらを返したように俺へ罵声を浴びせてくる。
くそぉ……やっぱダメか。
こうなったら――奥の手しかない。
「じゃあな、ゴミカス」
男がナイフを振りかざし、一直線に切りかかってくる。
仕方ない……もう、アレを使うしかねぇ。
俺は一瞬で距離を詰め、
男の眼球めがけて、右手を一直線に構えた。
そして、小声で呟く。
「……食らえ。アイサンド・クラッシャー」
――説明しよう。
《アイサンド・クラッシャー》とは、相手の眼球めがけて砂をぶっかけるという、超シンプルかつ効果抜群の戦闘術である。
要するに“目つぶし”。だがその破壊力は絶大だ。主に精神的に。
「うおっ……目がっ、目がぁ! テメェ何しやがったッ!」
男は視界を失って暴れまわり、完全にパニックだ。
周りの冒険者たちが「卑怯だ」「外道だ」などと言っているが……
――知るか。勝てばよかろうなのだ。
ライラはというと、
“こいつマジか……”
みたいな顔でこっちを見ていた。
ただ、その表情からはさっきまでの軽蔑じみた色は消えており、
どうやら俺の評価はギリギリ地面から浮いたらしい。
よし、ワンチャン回復。
そして今、相手は視界ゼロで動揺しまくり。
なら、次にやることはひとつだけだ。
――追撃。
俺は静かに構えを取りながら思う。
男の急所。すなわち、金玉。
そこへ、相手が気絶するまで容赦なく蹴りを叩き込む。
これが俺流の戦闘スタイルだ。
外道? 卑怯? 言わせておけ。
――生き残った者が、正義だ。
「よし……言っておくぞ。これからお前の金玉を集中的に蹴る。覚悟はいいか」
「は……? お、お前何言ってんだよ……そんなことしたらマジで……!」
「安心しろ。なるべく早く気絶できるようにしてやるからよ」
「そういう問題じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ギルド全体に、男の絶叫が響き渡った。
――後にこの出来事は、
《金玉蹴り事件》としてギルド史に刻まれることになる。
もちろん、主犯はこの俺である。




