第11話 緊急会議 場違いすぎて気まずいだが
俺とライラは急ぎ足でギルドに戻ると、受付嬢が書類整理をしているところだった。
「おかえりなさい。任務はもう終わったの? って、あれ? なんか二人とも顔色……」
「スライムが異常発生してるの!」
ライラが息を切らしながらカウンターに手をつく。
「え……異常発生?」
ライラは森で起きたことを一つずつ丁寧に説明した。
数が多いこと、行動が不自然だったこと、明らかに“何かの影響を受けている”可能性があること――。
説明を聞くうちに、受付嬢の表情が真剣になっていく。
「……そんな。スライムが群れで? それ、本当に?」
「本当だよ。悠斗も見てる」
「俺も見た、マジで多かった」
ライラと俺の報告が終わると、受付嬢はすぐ後ろの鐘を鳴らした。
カンッ! カンッ!
ギルドに緊張感が走る。
周囲の冒険者たちがざわつき、受付奥からギルドマスターが姿を現した。
「ただいまより緊急会議を行う! スライムの大量発生について、即時対処が必要だ!」
え、マジでそんなにヤバいのかよ、と俺が固まったところで――
「マリエ、状況を説明しろ。それと……報告したのは誰だ?」
ギルドマスターの視線が俺たちに向く。
受付嬢のマリエが俺たちを指差して言う。
「今回の異常を発見したのは、この二人です!」
するとギルドマスターが言った言葉が意外すぎた。
「……よし。お前たちも会議に参加しろ」
「えっ!? 俺ら、駆け出しなんですけど!?」
「第一発見者の証言は重要だ。来い」
強制参加だった。
ライラもポカンと口を開いている。
「えぇ……わ、私たち……?」
こうして、初心者の俺たちはギルド内の作戦室に通されることになった。
作戦室にはすでに冒険者たちが集まっていた。
全員、筋骨隆々だったり、威圧感があったり、魔力が濃すぎて空気が重い。
場違いすぎて胃がキリキリする。
そして——。
「ふぅ……遅れて悪いわ。ちょっと魔獣の死体運んでた」
ズカズカと入ってきたのは、一人の女性冒険者だった。
腰まである銀髪のポニーテール。
切れ長の瞳に、どこか獣めいた鋭さを感じる。
ライラとは真逆で、落ち着いた雰囲気というより豪快で野生的なタイプ。
肩には巨大な戦斧を背負っている。
「紹介しよう。Bランク冒険者、《狼牙のクレア》だ」
ギルドマスターが紹介すると、彼女は気怠そうに片手をひらひら。
「よっ。新人ちゃんたちが今回の第一発見者なんだって?」
「え、あ、はい……」
ライラが姿勢を正し答える。
クレアはその金色の瞳を俺へ向けて、ニヤッと笑った。
「で、そっちのアンタ。なんか……妙な魔力の残滓ついてるね?」
「え、え? どこ!?」
「股間あたり」
やめろ!!!! 恥ずかしいわ
「なんかやったの? アンタ、光ってたとか言われてたけど」
「言わなくていいからね!?」
ライラが即座に俺の口を塞ぐ。
クレアは豪快に笑った。
「ははっ、面白いじゃんアンタら! 気に入ったわ。一緒に作戦やるなら楽しくなりそうだ」
どうやら……悪い人ではなさそうだ。
ギルドマスターが地図を広げ、全員が真剣モードに入る。
「スライムは本来、単独行動。だが近隣で“群れ”が目撃されたという報告が他にも来ている」
「えっ……他にも?」
ライラが驚く。
「うむ。さらに異常な点がある。——“スライムの核が黒変していた”という報告だ」
ざわめく冒険者たち。
クレアが腕を組んで低く唸る。
「核が黒く? いや……核が黒くなるなんて聞いたことねぇ」
ギルドマスターが続ける。
「この異常は、魔物の活性化現象……つまり、大規模な魔力異変の前触れかもしれん」
ゴクリ、と俺は唾を飲む。
そんなレベルだったのかよ……。
「だからこそ、お前たちにも協力してもらう。第一発見者として、現場の詳細をもっと聞きたい」
ライラは緊張しつつも頷き、俺も覚悟を決める。
こうして俺たちは、思いもしなかった“重大事件”の渦中へ巻き込まれることになった。




