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俺のスキル、説明すると大体笑われるが、そんな他人からの評価なんてどうでもいいわ  作者: ささみやき


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第10話 服を溶かすスライム⁉︎ 最高じゃん

草原の外れ、小さな湿地帯。

そこに、ぷるぷると揺れる青いスライムが数匹。

戦闘感ゼロのかわいさで、ちょっと拍子抜けする。

スライムは俺の認識では雑魚だが、この世界ではどうなんだろう。


「なぁ、ライラ。スライムって強いの?」

「そこまで強くないよ。基本的に物理攻撃は効かないけど細かく刻み込めば死ぬから、魔法なら炎魔法で焼き殺すとか」


真面目な顔で怖いこと言わないでくれ。


「でもね、スライムで一番怖いのは――服を溶かすことだよ」


ぴたりと俺の足が止まった。


なん……だと……?


それは、太古の昔から男子の妄想図鑑に載り続けてきた“伝説”。

服を溶かすスライム。

ファンタジー世界で最も夢があり、最も危険で、最も原始的なロマン――!


(いや……いやいや、ダメだ俺! 落ち着け!)


だが脳内は勝手に想像を始めてしまった。

服を溶かされて慌てるライラ……

スライムに捕まって困惑するライラ……

そして――


「……悠斗」

「っ!」


横を見ると、ライラがひどく冷めた目で俺を見ていた。


「今、変なこと考えてたでしょう?」

「そ、そんなことねぇよ!」

「嘘。絶対考えてた」

「か、考えてねぇってば!」

「……まぁ、どうせ何考えてたか分かるけどね」


ひえぇっ……!

まるで心を読まれた気分だ。

ライラは呆れたようにため息をつきつつも、少しだけ顔を赤くしていた。


「とにかく。スライムは危険なんだから、真面目に戦ってよね?」

「お、おう……! 本当に真面目にやります……!」


ロマンとか言ってる場合じゃねぇ。

俺の命も、ライラの服も、俺の理性も守らなきゃならん。

俺が戦えるかは知らんがな。


こうして、俺たちはスライム退治へと足を進めた。スライムなんか雑魚だろ――そう高を括りながら、俺はぷるんと揺れる青い塊と向き合っていた。


……が、次の瞬間。


「ライラ、右だ!!」


俺の叫びと同時に、スライムが弾丸みたいに跳ね上がり、

ライラのローブの裾へ――ぺちょっ。


「きゃっ!? ちょ、ちょっと……なにこれ!?」


スライムは張りついたまま、じわぁ……と粘液を染み込ませ、

ローブの布地を静かに、しかし確実に溶かし始めた。


「うそっ……本当に溶かすの!? 話には聞いてたけど、実際にやられると困るんだけど!」


慌ててスライムを振り払うライラ。

だが、落ちた瞬間にはもう遅く――

ローブの端っこに、ちいさな穴がぽつんと開いていた。

元々裾が短いせいかパンツらしきものが若干見えかかっている。

あかん。理性を保て、今は戦闘に集中するのだ。


「うわぁぁ……! え、ちょっと見ないでよ悠斗!」

「見てねぇよ!? いや、今のはもう視界に入っちまうだろ!」

「だ、だとしても! こ、こんなの……恥ずかしいに決まってるでしょ!」


ライラは頬を真っ赤にしてローブの穴を隠しながら、

スライムをキッと睨みつける。


「……もう許さないからね。燃やす」


次の瞬間、ライラの掌から火球が走り、

スライムはぼふんっとミストみたいに蒸発した。


「はぁ……危なかった……ローブ新調しなきゃ……」

「大丈夫か? 怪我は?」

「怪我はないけど……精神ダメージは大きいよ……!」


ローブの穴を押さえながらふくれるライラ。

その表情に、俺は思わず苦笑する。


――まあ、無事ならいいか。

だが――事態は悪化した。


「おいおい……どこから湧いてきてんだよ、このスライム達!」


気づけば、周囲はぷるぷるの群れ。

さっきの数匹とは比べものにならない数が、ぬらりとこちらを取り囲んでいた。


「ウソぉ……さすがにこの量は無理! 私の魔力じゃ焼き切れないよ! 悠斗、なんとかしてよ!」

「なんとかしろと言われましても!」


戦闘力皆無なんだが。

必死に応戦しつつ、俺の脳裏にある記憶がふとよみがえる。


――異世界に来てすぐ、角ウサギに遭遇した時。

股間がやたら光って、あいつが逃げていった、あの謎現象。

……まさかとは思うが、あれ、使えるんじゃないか?


「よし。任せろ、ライラ。……なんとかする」

「え? ちょ、ちょっとその“なんとか”って――」


言い終える前に、俺は構えをとった。

下半身に重心を置き、精神を集中させる。


「――俺の股間よ、光れ!」


ピカァァッ……!!!


(※弱い。しかもちょっとチカチカする程度)


だが、その“謎の微弱フラッシュ”に、スライム達がビクッと震えた。


次の瞬間――

ぷるぷるぷるぷるぷるぅぅぅっ!!

スライムたちは一斉に後退し、まるで恐怖したように逃げていく。


「え、えぇぇ……逃げてった……!?」

「……まじかよ。本当に効いた……」


ライラがぽかんと口を開け、俺を見る。


「悠斗。あなた……もしかして……」

「……うん、言わなくていい。俺もよくわからん」


こうして――俺の“謎の股間フラッシュ”は、またひとつ実績を増やしたのだった。

スライムの群れが散っていき、場に静寂が戻った。


「……はぁ。なんとかなったな」


俺が腰をおろして息をついたその時、ライラが眉をひそめて周囲を見回した。


「……悠斗。やっぱりおかしいよ」

「え? 何が?」


ライラは指先で、地面に残ったスライムの粘跡を示す。


「スライムって、あんなに大量に群れない。スライムの巣だとしてもせいぜい数匹で薄暗い場所に隠れてるくらいなのに……“群れで行動する”なんて聞いたことない」


たしかに、俺でも異常だと感じた。


「でも別にそこまでおかしいことではないと思うけど」

「……一旦任務は中断した方がいいかもしれないね」

「マジで、せっかくここまできたのに」

「……スライム退治の依頼って簡単な部類だけど、“異常発生”してるなら話は別だよ。これ以上の突撃は危ない。悠斗、任務一旦中断しよ。ギルドに報告しないと」


ライラの表情はいつになく真剣だった。


「……分かった。確かにさっきの群れはヤバかったしな」

「だよね。あなたの……その、股間の光で助かったけど……」


そこで彼女は耳まで赤くしながら、小声で続けた。


「……ほんと、あの光何なの……?」

「俺が聞きたいわ!」


そんなやり取りをしながら、俺たちは森を後にした。


スライムの異常発生――

それが、後に大きな事件につながるとは、この時の俺たちはまだ知らなかった。


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