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下弦の月 奇妙な勉強会(上)

週刊コスモと引き換えに、今夜、勉強会が始まる――

「はぁ、はぁ、くっそー、いつ来てもこの塔、階段が多い……」


 ノックスは勉強道具と約束の週刊コスモを持って、何百段もの階段を登った。


「……お待ちしておりましたよ」

 

 ルナの青い瞳が左半分ずつ輝いている。今夜は下弦の月だ。


「さぁ、約束の雑誌はどこですか?」 


 ワクワクした声に押され、ノックスは左手で雑誌を差し出す。

 ルナは奪うように週刊コスモを受け取ると、ページをめくる手が止まらない。


「あと勉強道具を持ってきました。よろしくお願いします」


「あぁっ、なんてことでしょう! オリオンが大ピンチですわ!」


 ルナは漫画に夢中で、こちらの話など耳に入っていないようだ。

 ノックスはため息をつき、窓際の鉢植えに目をやった。

 土だけの鉢が、月明かりにひっそりと並んでいる。


 (芽が出てねぇ……ここじゃ育たないのか)


「ふぅ……今週も最高でしたわ! サイフ先生は天才ですわね!」


 一瞬で漫画モードから教師モードに切り替わり、ルナは机を指さす。

 ルナが座った机の向かい側には、当然のように、もう一つのふかふかの椅子が置かれていた。


「さあ、勉強しましょう。まずは試験結果を見せなさい」

 

 ノックスは渋々、羊皮紙を差し出すと、ルナの眉が吊り上がった。


「……こ、これは……あなた、相当成績が悪いですね? よくこの頭脳で候補者になれましたね? 縁故か何かですか? というか、最下位ということは、あのやる気皆無な金髪の男よりできないんですか?」


「カペラのことですか? あいつはわざと手を抜いてるんですよ」


 それを聞いたルナが首をかしげる。

「どうしてですの?」


「あいつ、実力はあるのに、王になる気が全くないんです。でも奥さんがめちゃくちゃ野心家で……義務的にやってるみたいですよ」

「というか! あの、これはたまたま調子が悪くてできなかったというか……!」 


 ノックスが恥ずかしそうに、もごもごと言い訳する。 


「まぁ、あなた方の学問への理解度が低くても驚きませんわ。所詮、影人かげびとですもの。でもわたくしがいれば百人力ですわ! まずはこの世界の歴史から学びましょう!」 

 

 若干馬鹿にされたような気がしたが、なんだかんだで、頼もしすぎる天女だ。

 これまで何人もの家庭教師をつけられてきたが、俺の成績はいつも及第点止まり。


 でも――今回は違う気がする。

 ひょっとしたら、今度こそもう一歩、先に進めるのかもしれない。


 そんな期待を胸に、この闇の世界でたった一人の天人との勉強会がはじまった。


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