十日月夜 カペラとランチ
「ノックス様ぁ♡ ごきげんよう!」
ノックスが回廊を歩いていると、後ろからアルビレに話しかけられた。
「あっ、アルビレちゃん、こんにちは」
「ノックス様、このあとお暇ですか? もしよろしければ、南中ご飯ご一緒しません?」
「えーっと、今日の南中飯はカペラと約束してて……」
「あらそうでしたの。では月の入りご飯はいかがですか?」
(あれ、アルト、アルビレのこと引かせるとか言ってたのに全然じゃね...…?)
ノックスはアルビレの押しの強さに戸惑う。
「えっと、ちょっと今日任務が長引くかもしれないから……また今度ね!」
そう言ってノックスは逃げるように去っていった。
◇
「おーいノックス。こっちこっち〜」
カペラは大きいカゴを持ってきて王宮の庭にシートを引いて待っていた。ピクニックか。
「エリナがね〜、お弁当大量に作ってくれたんだよ。ノックスも食べていいよ。はい魔鶏の手羽先ピリ辛揚げ!」
「サンキュー...…で、なんでこんな急に?」
カペラが頬を膨らませてむくれる。
「なんかさ〜、3人とも俺に隠し事してない?」
ギクリとするノックス。
「だって、リゲルなんて最近いつも暗くてブツブツ言ってるし、アルトはまぁあんまり変わんないけど、ノックスもずっと悩んでるみたいだし...絶対なんかあるでしょ!」
こういう変化に鋭いのがカペラだ。カペラにだけ真実を言わないのも不公平な気がしてきた。
「いや、実はさ....」
ノックスは真実を話すことにした。
◇
「そうだったんだ...…天人の目に力はないってことなのか...…じゃあ俺ら、ただルナちゃんのこと無意味にいじめまくってただけだね......」
カペラは申し訳なさそうにうなだれる。
「まぁ、俺はあんまり王になりたいって強い気持ちもないから、毎回テキトーにやってたけど。それでも、悪いことしちゃったな ……ねぇ、ルナちゃんに謝りに行ってもいいかな?」
(頼むからやめてくれ……カペラは何を言い出すかわからない……)
「……いや、それは今じゃなくても」
「じゃあ、候補者やめよっかな」
「はあ!? カペラがいなくなったら……俺、困るんだけど!」
「でもさ、俺、もともとそんなに王になりたいわけじゃないし。それに……何の意味もない殺人してまでやることじゃないだろ。エリナが知ったら怒るよ」
「……それは俺も嫌だけど……カペラ、頼むからやめないでくれ」
「……なんで?」
「俺は……制度を変えたいんだ。奪目の儀を終わらせて、もう誰もこんな目に遭わないようにしたい。だから、味方がいてほしい。今、候補者が入れ替わるとますます混乱が起こる」
カペラはしばらく黙っていた。
何かを決心したように目を瞬かせ、やがて笑った。
「わかった。候補者は続けるよ。俺はいつでもノックスの話、聞くからね。辛くなったら、またうちでエリナのご飯食べにおいでよ」
「ノックス様ぁ♡」
振り返ると、満面の笑みのアルビレが両手に包みを抱えて立っていた。
「お二人でお食事中でしたのね! デザートをお持ちしましたわ!」
「うわ〜出たよ、アルビレちゃん!」
カペラが冷やかしながらニヤニヤしている。
(……アルト、お前の“引っ込める”って一体……?)
アルビレの猛攻に反撃する暇もないノックスであった。




