上弦月 禁断の書を開く夜
昨夜更新し忘れておりました。すいません!!
一気に3話公開します!
上弦の月の試験の後に、ノックスは考える。
ルナは、影人の誰もが治せなかった闇の病を治癒させた。
本人にとっては人体実験のようだったが。
それでも、あれは闇を照らす一筋の光のような、奇跡のような出来事だった。
ノックスの胸には、アンバーの話を聞いたときにアストライオス王から手渡された一冊の古い本が、ずっとひっかかっていた。
『──この本には、すべてが記されている』
『だが、お前に読む資格があるかどうかは……自分で決めるといい。真実を知る覚悟があるなら、開け』
王の言葉は、まるでノックスの覚悟を試すようだった。
あの本には、ルナが何者で、なぜこんなにも過酷な運命を背負わないといけなかったのか、
そしてルナを殺さないといけない未来が確定してしまう気がして――ずっと読むのが怖かった。
けれど今なら。
ルナと一緒なら、読める気がした。
上弦の月が南西に傾く頃、ノックスは月の塔を訪れた。
「……なあ、今日、あの本を持ってきたんだ。一緒に読まないか」
ノックスがそう言うと、ルナは静かにうなずいた。
静かな月の塔のルナの部屋で、ろうそくの火が揺れる。
ノックスが取り出したその本は、千秋の時を経たものらしく、革の装丁には裂け目が走り、表紙の文字はすでに読めなかった。歴史を刻むような紙のざらつきが、指に伝わってきた。
ルナがページをぱらぱらとめくると、小さく息をのむ。
「前半は天人典礼語ですね……こちらはわたくしが読むことができます」
「後半は見たこともない文字ですわ……」
ルナの声がわずかに震える。この世界の真実を知ることに恐怖を感じているようだ。
「これは影人典礼語だ。こっちなら俺が読める」
「アストライオス王の言う通り、天人と影人、二人で力を合わせると全てが読めるのですね」
(伯父上も、昔、先代天女と一緒に読んだのだろうか……?)
そんなことを考えていると、ルナが最初のページをめくる。
ゆっくりと、語るように、彼女は最初の一節を読み上げた――
『――その始まりは、裏切りと絶望からだった。光と闇がまだ分かれていなかった時代』
『世界は一つで、すべての者が、太陽の光を分け合って生きていました』




