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二日月 戦略家の妹

第3章、開幕!

 月が東の空からのぼる頃、ルナは起床する。

 水を飲み、軽く運動し、レイピアの手入れをする。


「……あら?」

 机の上に、革でできた黒い大きな手袋があることに気が付いた。 


 ――これ、ノックスのものですよね。任務の時に必要なのでは…… 

 前からボケーっとした男だとは思っていましたが。仕方ない、届けてあげますか…… 


 ルナは手袋を持って、月の塔の階段を下りた。


 ◇


 候補者四人は、王宮の庭で集まって話していた。任務の間の休憩時間のようだ。 


「あのさ、今日は重大発表があるんだよね!」 

 カペラがいつもよりも嬉しそうにしている。


「なんだ? ついに候補者を辞める気になったのか?」

 アルトがせせら笑いながら茶化す。


「違う違う、実はさ...…エリナが妊娠したんだ!」


 しん……と場が静まる


「え、マジで?  おめでとう!!」

 ノックスは素直に祝福する。


「……やはり、夫婦生活の充実が――」 

 アルトは確信した様子だ。


「やめろやめろやめろ、言うな」

 リゲルは綺麗な顔をほのかに赤らめる。


「この前から思っていたが、お前、もしかして経験ないのか?」

 アルトがあっさりとリゲルに言う。


「ちちちちちちげぇし!!うるせぇよ!!」

 今やリゲルの顔は業火よりも赤い。


「カペラは毎日早く帰ってるし……なぁ?」

 ノックスはアルトの方を向いて意味ありげな視線を送る。


「頻度は重要だな……」

 いつもと変わらない真顔で分析するアルト。


「おまえら〜真顔で言いたい放題だな〜!」

 カペラは相変わらずへらへらしている。



 ――な、なんと低俗な話をしているのでしょう......!

 特にアルトとか言うあの眼鏡の男! 顔色一つ変えず涼しい顔して破廉恥な! 

 これだから影人は……!


 柱の後ろで全てを聞いていたルナは顔を赤らめる。


「じゃ、俺ら別の任務あるから先に行くわー」


 しばらく話した後、リゲルとカペラがどこかへ行ってしまった。



 ルナがノックスに話しかけようと柱から顔を出しかけたとき、後ろから一人の影人がやってきた。


「まあ、天女様がこんな場所にいるなんて珍しいですわね。……通していただけます?」


 その影人の女はルナよりも少し背が高く、上品なワンピースを着ていた。

 髪の毛はダークグレーのセミロングの髪をハーフアップにしており、良家のお嬢様といった雰囲気だ。


「おっ、アルビレ、来たか」


「はい、お兄様、お疲れ様です」 


「ノックス、さっき紹介したい人がいると言っただろう。私の妹、アルビレだ」 


「アルビレです。お兄様からいつもお話伺っておりますわ。奪目の儀でのノックス様の炎の魔術……あの炎の熱さに、胸が高鳴って……まだ冷めませんの……」


「そ、それはどうも......」


 ――なんですか、あのひ弱な小動物の皮をかぶった女豹みたいな影人の女は… 


 ノックスに熱い視線を送るアルビレを見て、ルナは心がざわついた。  


 ノックスはアルトを引き寄せ、ヒソヒソと話す。 


「おい、なんだよ急に? どういう風の吹き回しだ?」


「アルビレが以前からお前のことを気に入っていてな。私の妹だし、家柄も器量も悪くない。お前もそろそろ身を固めたらどうかなと思ってな」 


「えっ!」  


「……それに、お前が王になった時、私たちが親戚ならお互い心強いだろう?……お前は頭脳ではリゲルに劣るかもしれん。だが、あいつは嫉妬深くて精神的に脆い。あれでは人の上に立てない」 


「まぁ無理にとは言わんが、試しに何回か会ってみるといい」


「ノックス様、このあとお暇ですか? 良かったら南中ご飯をご一緒にいかがですか」 


「えっ...…あぁ、うん……」 


 ノックスとアルビレは、二人で王宮食堂に向かっていく。 


 ルナはそんな二人を見送りながら、固く唇を噛んだ。

 ――手袋を渡すはずだったのに。


 気づけば、手袋は胸に抱かれたまま。足は月の塔へと向かっていた。

「……なんでしょう、この気持ち……」


 そう呟いた声は闇のなかへと吸い込まれていく。


 柱の後ろで全てを聞いていたルナは、手袋を渡すことなく、一人で月の塔に戻った。 



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