十三夜 候補者たちの晩餐会(上)
キーン……カーン……
王宮の訓練所で金属がぶつかり合う音がする。
奪目の儀に向けて、候補者たちがそれぞれ鍛錬している。
カペラは鞭を巧みに操り、遠くにある瓶を鞭に巻き付けて器用に手でキャッチする。
「はぁ〜、いつも思うけど訓練きっつ……魔術使いてぇ〜」
カペラは水をがぶがぶ飲み、訓練をサボりながら言う。
「仕方ないだろう。影人は満月の夜しか魔術が使えないのだから。他の日はこうして肉体と武術を鍛えるしかない。」
アルトが太刀で複雑な型を練習しながら言う。
「でもさぁ〜、俺たち、満月の夜しか魔術が使えないとか、めっちゃ不便じゃない?せっかく『稲妻のカペラ』って異名まであるのに、いつも『鞭のカペラ』だよ……」
「……お前、少しは真剣にやったらどうだ」
アルトがぴたりと手を止め、鋭く言う。
「王決定戦に敗れた者に、次のポストは約束されていない。名誉職が与えられることもあれば、二度と政務に関われないこともある」
「……まっ、そうなってもなんとかなるっしょ♪」
カペラは猫のようにゆったりとくつろいでいる。
「こっちは必死なのに……お気楽なもんだな……」
リゲルが小声で呆れたように言う。
キリキリキリ……バシューン……ドスッ
リゲルの引いた3本の弓が的の中央に刺さる。
「さすがだな、リゲル。弓の精度が高い」
アルトは眼鏡の奥の目を大きくしながら感心している。
「的なら当たるけど、あいつ矢より速くて、絶対当たらないんだよな……」
リゲルがくやしそうにうなだれる。
ノックスはいつもの三倍はある鍛錬用の大剣をゆっくり振り回しながら、先日の夜のことを考えていた。
――やっぱり突然抱きしめたのはよくなかったか...
でもルナ嫌がってなかったよな……
しかしルナに触った時の、あの渇きが満たされるような感覚……
あれはなんだったんだ……
「やっぱすげーな、ノックス。俺、あんな重いの持てないよ~」
カペルが素直に感心して言う。
リゲルがどこか悔しそうにノックスを横目で見ながら、弓の訓練に戻った。
◇
月が南西の空に傾く頃、時を告げる鐘が鳴る。
「ふう、疲れた〜。ねぇ? 皆、今日この後暇? 俺んちで月の入り飯食べようよ!」
フワフワの金髪を揺らしながら、カペラの垂れた人懐っこい目が赤く輝いている。
「えっ? いいのか? 俺さっき、南中飯抜いちゃったからありがたい……」
ノックスの赤い瞳が嬉しそうにきらきらと輝く。
「……俺は帰って勉強したい」
誰がどう見ても、リゲルは行きたくなさそうだ。
「ふむ、自炊は面倒だし、人が作った飯を食べるのも悪くないな……(金がうくし)」
「えっアルト行くの!? じゃあ俺も行くか……」
リゲルがあせあせしながら言う。
「今日はエリナが美味しい魔獣シチュー作ってくれてるから、みんなで食べよー!」
こうして、四人でカペラの家に行くことになった。
――つづく




