出会い②
「こここ、これ、全部。クロエさんが?」
「は、はい」
「す、すごい。こんなにたくさんの骨の山。は、初めて見ました。こんなにあれば、その。いくらでも、"武器"を作ってもらえたり、ギルドの"骨収集依頼"でお金儲けできちゃいますね」
恍惚としながら、ココネはパチパチと小さく拍手。
その姿は実に愛らしい。
「どうやってこんなにたくさんできたのですか? い、一週間ぐらい。ここで狩りをしてたのですか?」
慣れない上目遣い。
それをもって、ココネはクロエを見つめる。
尊敬に満ちた、ココネの眼差し。
クロエはそれに頬を赤らめながら答えた。
「えぇと。さ、三時間くらいで」
「さッ、三時間!? 三時間でこんなに!?」
「は、はい」
「クロエさん」
「はい?」
「も、もしかしてクロエさん」
ぎゅっと。真正面からクロエの手を握った、ココネ。
それにクロエの鼓動は高鳴る。
幼い顔立ち。つぶらな瞳。間違いなく美少女。
こんな美少女に手を握られた経験など、もちろんクロエにはない。
ごくり。
と唾を飲み込む、クロエ。
呼応し、ココネは意を決し声を発した。
「もしかしてクロエさん。え、SSS級の冒険家さんなのですか? こんなことができるすごいクロエさんが……た、ただの冒険家だなんてあり得ません」
熱を帯びる、ココネの声。
心なしかうっとりしているようにも見えなくもない。
「も、もしよろしければ。一生、わたしを貴方のお側に」
目がハートマークになる、ココネ。
「あ、あのココネさん?」
「SSS級のクロエさん。素敵。ようやくわたしにも運命の人が」
「ココネさん! お気を確かに! 俺たちまだ出会ったばかりですよ!?」
「結婚式はいつあげます? なんなら今、この場で」
1人。うっとりとする、ココネ。
だ、だめだ。
完全に恋する乙女になってる。
「おーいッ、ココネさーん!」
クロエは優しく肩を揺する。
そして、二度三度とココネを優しく揺らした結果ーー
「はっ。わ、わたしはなにを」
ココネは正気に戻り、同時に顔を真っ赤に染めてしまう。
「はわわわ。ご、ごめんなさいクロエさん。い、いつもの癖で。わ、わたし乙女モードに」
しかしクロエは笑顔で応えた。
「よかった。正気に戻ってくれて。でも俺、うれしかったです!」
「うぅ。初対面なのにすみません」
こうして2人は互いに笑い合ったのであった。
〜〜〜
「というわけなんです」
「クロエさんも。わたしと同じで色々大変だったんですね。ふふふ。お互い苦労が尽きませんね」
山盛りになった骨の山。
それを小袋の中に【収納】し、ココネはクロエに振り返り微笑む。
ココネのすぐ後ろの木の影。
そこにクロエは、座っていた。
「わたしなんてドジばっかり。【収納】した物を取り出す時に壊しちゃったり、収納した場所を忘れちゃったり……へへへ」
笑い。
クロエの側に腰を下ろす、ココネ。
「奉公先には感謝してるんです。一週間は我慢してくれたんですよ? 他のところは、三日。はやくて半日。一時間のところもあったかな? わたし、親をはやくに亡くしちゃって。だから、その。頑張らないと」
ココネは、どこか悲しそう。
「で、でも。今回はもっと長く。クロエさんのお側に」
「ココネさん! だったら俺といっしょに成長しましょう! 俺もまだ駆け出しなんで!」
笑顔でココネの手を取った、クロエ。
「く、クロエさん」
目を見開き、ココネは瞳を潤ませる。
「いきますよ!」
〜〜〜
エンカウント操作。
対象ーーココネ。
被対象物ーーココネより弱い魔物。
〜〜〜
「遭遇率。ココネさんが成長する勇気を持った時」
わざとクロエは、遭遇率だけ声に出す。
「さぁ。きますよ、ココネさん!」
「俺のエンカウント操作は絶対ですから!」
ぽろぽろと涙を流す、ココネ。
瞬間。
小さき魔物たちは姿を現す。
クロエのエンカウント操作。
その遭遇率に応じて。ぞろぞろと。
ココネは、立ち上がる。
そして、クロエの手を握りーー
ずっと。この人のお側にと心に誓ったのであった。