出会い①
〜〜〜
「クロエ。中々、面白い冒険家ね」
膝にちょこんと座る、数匹のダイヤモンドラビット。
その頭を優しく撫で、イライザは優雅に呟く。
魅了。
イライザのその力により、ダイヤモンドラビットたちはイライザの元から離れることはない。
豪奢なソファーに、室内を埋め尽くす様々な珍しい調度品。一目でそこは、高貴に満ちていると理解できる室内。
そんな室内にイライザは居た。
ソファーに腰掛け、その手に金色のティーカップを持ちながら。
「ねっ、あなたたちもそう思わない?」
「きゅっ?」
イライザの問いかけ。
それに小首を傾げる、ダイヤモンドラビットたち。
「ふふふ。王都に推薦しても構わないのだけれど」
クロエの姿。
それを思い出しーー
「王都直属より。わたくし専属の冒険家になっていただけないかしら? エンカウント操作。なんてお力……王都に渡すなんて勿体無いと思わない? それに、あのお姿」
「きゅっ! きゅっ!」
問いかけるようにして、イライザは興奮するダイヤモンドラビットたちに呟く。
その頬は仄かに赤らみ、イライザはどこか恋する乙女のようでもあった。
〜〜〜
「ふぅ。少し、休憩するか」
エンカウント操作。解除。
かれこれ数時間。
クロエは自分より弱い魔物を討伐し続け、その戦利品も山のように膨れ上がっていた。
なにせ、"息をするたびに魔物と遭遇"するのだから、時間の無駄など皆無に等しい。
だが、問題がひとつ。
「こ、これ。どうやって持って帰ろう。1人じゃ到底無理。だよな」
山盛りになった、"加工できる小さな骨"。
それを見上げ、苦笑しつつ、クロエは胸中で呟く。
エンカウント操作で、新たな力と"遭遇"できたりするのかな?
いや、それは流石に厳しいか。
で、でも。
突風。雷。それらが、被対象物として対象物に遭遇させることができたと考えればーー或いは。
た、試してみる価値はあるよな?
意を決し、クロエはエンカウント操作を応用しようと試みる。
〜〜〜
エンカウント操作。
対象ーークロエ。
被対象物ーー収納の力。
遭遇率ーー100%
〜〜〜
しかし、なにも起こらない。
「やっぱり、無理か。まっ、そりゃそうだよな」
想定内の結果。
それにクロエは、残念がる様子はない。
流石に"新たな力"までは、対象にはできない。
いずれはできるかも?だが、今は不可能。
そう納得し、クロエが「さて、どうしたものか」という表情を浮かべたーーその時。
ガサっ
と草むらが鳴り。
「うぅ。【収納】しかできない奴は用無し。って、言われて、奉公先でクビになっちゃったよ……ぐすん」
そんなことを泣きべそ顔で呟く、赤髪の少女がクロエの前に現れる。
顔立ちは幼く。体躯は小柄。軽装で、どこか小動物のような愛らしさがある。
「はぁ……どこかに【収納】を必要としている人。居ないかな。居ないよね。そんな都合良く、いるわけ」
「あ、あの」
こ、これがエンカウント操作の力なのか。
そう胸中で呟きつつ、クロエは少女に声をかけた。
「はい? あ、あなたは?」
「俺は、クロエ。丁度、収納を使える人を探してたんです」
「!? そ、そうなんですか!? わッ、わたし! ココネっていいます! ど、どうですか? わたしを雇ってはいただけーー」
「よろしくお願いします!」
即答する、クロエ。
「!? やっ、やったー! これで路頭に迷わずに済みました!」
こうしてクロエは、花のような少女という新たな仲間と出会ったのであった。