エンカウント操作⑥
一方、その頃。
クロエを追放したパーティーは、絶体絶命の危機に瀕していた。
「アラン。どどど、どうするの?」
「サラマンダーが既に数百匹は超えてるぜ」
「ま、まだ死にたくない」
「くっ。ど、どうしてこんなことに」
洞窟の中。
そこに響く、マリア。ゴウメイ。リンメイ。アランの焦燥と絶望に満ちた声。
からくも彼等は偶然見つけた洞窟に逃げ込み、ことなきを得ていた。
しかし、洞窟の出口にはうようよとサラマンダーが闊歩。その表情には、四人のことを決して諦めようとはしない強い意思が宿っている。
「こ、ここは土下座でもなんでもして。サラマンダーに見逃してもらいましょう」
提案する、マリア。
そのマリアに、「うんうん」と泣きそうな顔で同調するリンメイ。
だが、その提案をゴウメイは遮った。
「土下座した瞬間に丸呑みされるのがオチだ。そ、そんな危険な賭け俺は反対だぜ」
「じゃ、じゃあ。なにかいい案があったりするの?」
沈黙する、ゴウメイ。
「うぅ。あ、アラン」
震えながら、アランに助けを求めるリンメイ。
アランはそんなリンメイに、応える。
「こいつはきっと。奴の仕業だ」
「?」
「クロエだよクロエ。あいつに会った後からだろ? こうしてサラマンダーが出現したのは」
「い、言われてみれば」
「ちっ、あの野郎。俺たちに追放された腹いせにこんなことしやがって。性格捻じ曲がってんな」
悪態をつく、アラン。
「そ、そうよ。全部あいつのせいよ」
「アランの言う通りだ。全部、あいつが悪い」
「クロエが悪い。くそ、くそっ。あいつに嵌められた」
アランに同調しクロエに責任転嫁していく、マリア。ゴウメイ。リンメイ。
彼等に反省の二文字はない。
だが強がったところで状況は好転しない。
そこでふと、アランは思いつく。
「誰かが囮になるしかねぇ」
その言葉。
それに面々は、互いに顔を見合わせーー
「ゴウメイッ、貴方が囮になりなさい! 男でしょ!?」
マリア。
「はぁ!? てめぇがなれよ! マリア!」
ゴウメイ。
「ふんっ。だったら、あんたら二人が囮になれば? わたしは逃げるから!」
リンメイ。
「黙れッ、お前ら! リーダーである俺の代わりに三人で囮になれ!」
そして、アラン。
立ち上がり、彼等は言い争いを続ける。
そこには無かった。誰かを思いやる気持ちなどひとかけらも。
響く四人の大声。
それにサラマンダーは刺激され、洞窟の出口で口を大きく開ける。
そして。
「グォォォン!」
気高い咆哮。
それと共にーー
「「ひっ、ひぃぃぃ!」」
涙目で喚く四人に向け、その口から火炎の息を噴射したのであった。
〜〜〜
同時刻。
クロエの姿は、再び森の中にあった。
「「ひっ、ひぃぃぃ!」」という声が聞こえたような気がするが、気にしない。
「さて、と」
〜〜〜
エンカウント操作。
対象ーークロエ。
被対象物ーー自分より弱い魔物。
遭遇率ーー100%
ドロップ率ーー100%
〜〜〜
「もう少し効率をあげよう」
遭遇率ーー100%→息をする度。
〜〜〜
途端。
クロエの前に、ダークトカゲ。ダークフロッグ。ダークスネーク。が草むらから出現。
それは、クロエにとって丁度良い相手だった。
「よし。いい感じだ」
更に、クロエは力を行使。
〜〜〜
エンカウント操作。
対象ーー自分より弱い魔物たち。
被対象物ーー雷。
遭遇率ーー100%
〜〜〜
呼応し、魔物たちに小さな雷が降り注ぎ、一瞬にして、クロエは魔物たちを討伐。
合わせて、ドロップ率100%の効果で、クロエは戦利品である"加工できる小さな骨×3"を手に入れたのであった。