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はじまり

~~~


「クロエ。今日をもってお前をこのパーティーから追放する」


 とある宿屋の一室。

 そこに、パーティーリーダーである剣士〈アラン〉の声が響き渡った。


 そんなアランの声。

 それに他の仲間たちも嘲笑と共に続く。


「そうよ、クロエ。貴方とは今日をもってお別れよ。"遭遇〈エンカウント〉"っていう珍しいスキル持ちってことで仲間に迎えてあげたけどーー」


「なんにもしてねぇだろ。いやむしろ。てめぇを仲間に迎えてから魔物との遭遇率が増えたような気もするぜ」


「そうだそうだ。おかげでわたしたちはもうヘロヘロだ。クロエ、わかってる? あなたを仲間にしたわたしたちも悪いけど。それに胡座をかき続けたあなたも充分に悪いってことが」


 治癒士〈マリア〉。

 武闘家〈ゴウメイ〉。

 そして、魔法使い〈リンメイ〉。


 皆その顔は嘲笑に彩られ、クロエを小馬鹿にしている。


 そんな仲間たちに、クロエは応えた。


 その表情を強張らせーー


「い、いきなりなんだよ。なにかの冗談だろ? は、ははは」


 クロエは笑ってごまかそうとする。


「お、俺が居なきゃ。魔物との遭遇をコントロールできなくなっちまうぞ? い、いいのか? 一歩歩くごとに魔物と遭遇しちまっても?」


 このパーティーに誘われた恩。

 それに報いる為、クロエは懸命に遭遇率を調整していた。


 パーティーレベルに合った魔物。

 そして、程よい遭遇率。

 それを自らのスキルーー"エンカウント操作"を用い、一生懸命に。


 だが、仲間たちは信じない。

 いや、信じようとはしなかった。


「なんだ、クロエ。もしかして、俺たちを脅してんのか?」


 語気を強め、クロエを睨むアラン。


「一歩歩くごとに魔物と遭遇? はっ、そんな馬鹿げたことあり得るわけねぇだろ。てめぇ、あんま自分を買い被るなよ」


 吐き捨て、アランはクロエの元に歩み寄る。


 そして。


「クロエ。これ以上、くだらねぇ戯言ほざくな。わかったか? わかったならさっさと俺たちの眼前から消え失せろ。この役立たずのゴミ野郎」


 クロエの胸ぐら。

 そこを掴み、勢いよく拳を叩き込む。

 クロエの頬。そこに目掛けて、力一杯に。


 よろけ。


「……っ」


 クロエは涙目になりながら、仲間たちを見据える。

 そんなクロエに突き刺さったのは、仲間だと思っていた面々の冷たく刺すような眼差しと思いを踏み躙る嘲笑だった。


 悔しさと、情けなさ。

 それに胸を押さえ、クロエは逃げるようにその場を後にする。


 群れから取り残された子羊のように。

 小刻みにその身を震わせながら。


 そんなクロエは、まだ知らない。


 自身のスキルーーエンカウント操作。

 それが、今まさに。


 エンカウント操作(レベル999)に覚醒したということに。


 そして、それは。


 この世界における、クロエの最強への第一歩に過ぎなかった。


 ~~~

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