9.ローレライは謎に包まれている
その日も私はレイと交代で、お茶会に出ていた。
そこではまさかの私の話題が上がったのだ。
「殿下、殿下はお従妹のガオナー伯爵令嬢にお会いしたことはあるのですか?」
お会いするも何も毎日一緒にいるのだが。
「ああ。どうして?」
「病弱でいらっしゃるとか」
「そうだよ。体が弱くってね。無理をするとすぐに寝込んでしまうんだ」
「そうなんですの。ガオナー伯爵家の皆様は謎に包まれておいでですから少し気になってしまって」
「存在してらっしゃるのですか?」
何人かの令嬢は気になって仕方がないようだ。
「我が従妹殿は社交場へ出られないのが、惜しいぐらいの美貌の持ち主でね」
と自分のことながら言ってみる。
「そうなんですか?」
「ちなみに婚約者がいらっしゃったりは?」
と今度は令息たちだ。
「今はいないと思うけれど」
「デビューが楽しみだな」
「俺にもチャンスあるかな」
等色々言っている。
そうなるとめんどくさいのが令嬢である。
「本当にそんなにお美しくていらっしゃるの?」
「従妹だから良く言っているのではなくて?」
「病弱だと後継ぎが産めませんわよね!」
とコソコソ言っている。
「我が従妹殿のことはそうっとしておいてくれないかい?噂されていると知ったらまた倒れてしまうかもしれない」
と貴公子スマイルをしながら謎設定も入れてみる。
「殿下がそうおっしゃるなら」
と皆が引き下がった。
その日のお茶会は私の話がメインで終わってしまったな。
「ローリー様よかったのですか?王子がいくら従妹でも令嬢のことを美しいと言うなんて」
とメリッサ。
帰りながら話をしているのでメリッサは私のことをローリー様と呼ぶ。
「ローレライを悪く言う人は王子妃には向かないでしょう?ある程度篩いにかけられると思うよ」
「そうですけれど、それでは今度ローレライ様がデビューするときには嫉妬の対象ではありませんか」
「ローレライがそれでいいんだからいいんだよ」
不服そうなメリッサに
「まあ、ローレライ様が美しいのは事実ですしね」
とフレッツ。
「ローリー様、あまりローレライ様を悪く言わないでくださいまし」
メリッサはあくまでローレライの心配をしてくれている。
「はいはい」
と適当にいなしていると、いきなりナイフが飛んできた。
「ローリー様お下がりください」
とフリッツに言われ、フリッツの後ろに下がると敵が現れた。
黒づくめで顔は隠してある。
剣でフレッツに切りかかるがフレッツも負けてはいない。
「ローリー様逃げますよ!」
とメリッサに促され、逃げようとするとやはり行く手を阻まれる。
「ここはお任せください」
「絶対捕らえてよ」
「御意」
とメリッサが返事をしているのを聞きながら逃げるが、もう一人現れる。
読んでたよ。
いつも私たちは3人で行動しているのだから。
「すまないな。王子様。ここで死んでもらう」
みすみすやられるわけが無いだろうに。
相手がモーションに入る前に、ポケットに忍ばせていたナイフを投げる。
狙うは利き腕の腱だ。
ザシュ
間髪入れずにもう一発。今度は両足。
膝をついてる間に近付いて今度は腕に付けていたアクセサリーから毒針を。
痺れて動けなくなるやつね。
ふぅ。仕事完了。
子供だからと舐めていたのだろう。簡単だったな。
そして、戦い終えたフレッツが相手を担ぎ、メリッサが引きずりながらやってきた。
「「ローリー様ご無事で何よりです」」
「ああ。ふたりもね」
フレッツに騎士団長のフォードを呼んできてもらい、引き渡す。
父様の贄となれ。