5.刺客
「ははー」
と呼ぶと2人の母から「「はーい」」と返ってくる。
伯爵家として屋敷は持っているが、何かあった時のために王宮に部屋をいただいている我が伯爵家。
仲が良すぎる母達はしょっちゅう一緒にいる。
母曰く「王妃様の身代わりにならなければ!」とのことだ。
そのために母も護身術を習ったそうだ。母も十分イカれていることがおわかりいただけただろうか。
私とライは事情を知っている騎士団長、フォード=シュバリエ侯爵から剣術も一緒に習っている。
父様より少し年上の筋骨隆々のベテラン騎士だ。
隣国から狙われている我が国の騎士団はレベルが高いらしい。
剣術に関しては私もアドバンテージが無くまっさらからのスタートなので、しばらくは実力差もでないだろう。
ちなみに、護身術とは別である。
私とライにはそれぞれ護衛が付いている。
フレッツとフリッツ。
フレッツが私の護衛、フリッツがライの護衛である。
それから専属の侍女も付いてる。
メリッサとアリッサ。
メリッサが私の侍女で、アリッサがライの侍女である。
この侍女たちは護衛も兼ねているから戦える戦闘系侍女だ。
この2組これまた双子なのである。
代々王家と伯爵家の護衛・侍女となるべく産み育てられている。
我々の事情を知る数少ない貴族だ。
詰め込み教育をされながら日常を過ごしていると、隣国がきな臭いと言う噂が立った。
情報収集しているうちに、私とライが寝ているところへ刺客が送られてきた。
「王子が2人だと?」
とうろたえているうちに、枕元に置いてあるナイフを投げる。
狙うは頸動脈だ。
「ライ危ない!!」
私が投げたと同時に投げられたナイフがライに迫る。
それをわたしはライに覆いかぶさるように庇った。
背中へと突き立てられたようだ。
「フレッツ!!フリッツ!!」
と護衛を呼ぶ。いきなり部屋の中へ現れたのだから護衛が間に合わないのも仕方ない。
「後はよろしくたのむね・・・」
と言い切ったところで意識が遠くなるのだった。
目覚めると、ライと父様がいた。
「レイ、よくやった!」
「レイ、いたい?」
「だいじょうぶ。父さま、しかくは?」
「大丈夫だ。こと切れていた」
「よかった。王子がふたりってバレたからにがすわけにはいかないでしょう」
「ああ。お前は私の自慢だよ。さあゆっくりお休み」
「れい、いっしょにねる」
「うん」
「さあ。ふたりともお休み」
と父様に頭を撫でられるとスッと眠りに落ちた。
「メリッサ、アリッサ頼んだよ」
「「お任せください」」
2人が眠った後、リカルドは静かに怒りの炎を燃やしていた。
「さて、締めあげましょうね」
と笑った。
実はあの刺客の仲間がまだ、王宮内にいたのである。狙うは王だ。もちろんそんなことはさせない。
騎士団長が捕らえてある。
さあ。どう交渉しましょうかねえ。