4.ローレライ
ガオナー伯爵家の長女としてこの世に生を受け、『ローレライ』なんて歌声でちょっとどうにかできそうな可愛い名前を付けてもらった。
女の子として生まれたのに、王子であるローライドの影武者となるべく育てられるらしく男の子の恰好をしている。
そこに不満は一切ない。
だって幼児だし、ズボンじゃないと動けないでしょと現代人は思うのです。
現代人とは言っておりますが、前世の記憶が現代人であっただけ。
ふむふむ。父と母の話を聞くに、私は王子として生きるのね。
前世が平凡だった私は、楽しそう!と思ったのだ。
「レイ。レイは王子を守るんだよ。レイにしかできないんだからね」
王子を守る?間者がきたら王子の盾になり、毒を盛られそうになったら私が代わりに毒を受けるのね。
3歳の私はごくごく少量の毒を徐々に摂取するようになる。
「レイ。これを飲んだら苦しいとは思うけど、大きくなったら無敵になれるんだよ!」
と言う父に。
「わかりました。とうさま」
と毒を飲む。
するとやはり毒に侵され寝込む。
寝込むとライがやってくる。
「れい。くるしい?しなないで」
と涙をポロポロ溢しながらがら言うのである。
「しなないよ。らいをまもるんだから」
と言うとホッとするライは私のベッドへ一緒に潜り込み手を繋いで寝る。
ここまでがワンセットだ。
2人で一緒に毒を飲むときもある。
その時も一緒に寝込み、一緒に元気になるのだ。
ライも毒を摂取しているけど、私は種類が多い。どんな毒も効かないように今から慣らしていく。
勉強も一緒。ただまあ3歳など覚えることは簡単だ。
テーブルマナーは身体が小さくて大変だった。だけどライが頑張ってるのだから前世大人の私も頑張らねばなるまい!
と何でも2人で頑張った。
5歳になると、私とライに弟ができた。
もちろん瓜二つ。こちらもまた私の弟は王子の身代わりとなるらしい。
弟もまた私と同じ道を進むのだと思うと、父が子供の時もそうだがイカれてるよな。
私は前世の記憶があるから、納得できても普通の子供はそうはいかないだろう。
クレイジー。
私に毒を飲ませまくり、護身術を叩き込んでる父めっちゃイカれてるよ。
そんなクレイジーな父だけど何でも知っているし何でも教えてくれるから私は大好き。
同じく母もイカれてるので、よく似た夫婦である。
イカれた父と母が理解している私と同じような教育を弟にさせないように私はフォローしないといけないだろうか。
まあまだ赤ちゃんである弟たち、ライの弟ルイスと私の弟ルカス。“ルース”をしばらくは可愛がるとするか。
弟たちは私たちの見分けがつくだろうか。
宰相である伯父様も、お祖父様である元宰相も私とライを見分けられない。
見分けが付いちゃあいけないんだけどね。
よくよく見れば、気持ち私の方が垂れ目だけどほんのちょっとだから気付かないだろう。
垂れ目は父に似たのだと思う。
「私に似て可愛い!!」
と抱きしめてくるのだから。
ちなみにライのことも「レイに似て可愛い!!」と抱きしめている。
イカれた父だが愛されてはいる。