19.お友達ができました
ライと踊った後、やはりやってくる令息たちを父がバッサリ切っていく。
「ガオナー伯爵令嬢、「娘は病み上がりで、これ以上は体調を崩すからすまないね」
と全て被せていくスタイルだ。
貴族としては微妙なのだが、当主だから令息より身分が高いため許されるのである。
病み上がりで体調を崩すと言われて無理に誘ってくる馬鹿はいない。
すると
「あら!それならわたくしとスイーツでもいただきませんこと?」
と快活な喋り方で話しかけられる。
「娘となら一緒でも構わないのではないか?リカルド久しいな」
「これは、ボイアンシー辺境伯殿。ご無沙汰しております」
おお!国境を守ってくれている辺境伯様だ!凛々しい!
「リカルド、いつも通りでいいぞ」
「そちらも娘がデビュタントだったね」
どうやら父様のお友達らしい。
「娘の、チアフィルだ」
「お初にお目にかかります。ボイアンシー辺境伯家、長女チアフィルと申します」
と快活な喋り方に似合いの、真っ赤な髪に真っ赤な瞳のすらりとしたカッコイイ美女だ。
ドレスもスッキリとした細身のドレスを着用しており、良く似合っている。
「ご丁寧にありがとう。私は父君の友人のリカルド=ガオナー。こっちは娘のローレライ」
紹介されたのでご挨拶だ。
「ガオナー伯爵家、長女ローレライと申しますわ」
「リカルドに似て美しいな。令息どもの誘いを断るのも頷ける」
「一人にはしておけないのがわかるでしょう」
父、謙遜しろ。
「伯爵様!わたくしにお任せくださいな。蟻一匹近づかせませんわ」
「リカルド、うちの娘は役に立つぞ!」
と嬉しそうな親子。
「じゃあ、頼めるかい?チアフィル嬢」
ああ。父様の優男スマイル。
「ええ!」
と頬を染めるチアフィル嬢。
「ローレライ、チアフィル嬢と飲食スペースにでも行っておいで」
「はい。わかりましたわ」
と父様はボイアンシー辺境伯とどこかへ行った。
「ローレライ様!伯爵様素敵なのねー!あなたもそっくりで羨ましいわ」
「ありがとう存じます。チアフィル様もお父上によく似て背も高くて快活で素敵ですわ」
「まああああ!わたくしを素敵だと言ってくださるなんて」
「事実ですもの」
と微笑んでおく。
「これはわたくしがしっかり守らなくては!」
となぜか庇護対象になった。
「ローレライ様、わたくしのことはチアで構いませんわ」
「はい。チア様。わたくしのこともローラと」
レイの呼び名はあまり知られない方がいい。
「様もいりませんわ。ローラ」
「じゃあ、チアも言葉崩してね」
「ありがとう!私この喋り方苦手なの」
そうだと思ってたよ。私も苦手だしね。
「ではローラ、さっそく飲食ペースに向かうわよ。私ローラに会ってみたかったの!」
「どうして?」
「お父様がガオナー伯爵とお友達だから、私もご令嬢と絶対仲良くなりたいと思ったのよ。ガオナー伯爵家は王家の懐刀でしょう?」
と小声で聞いてきた。良く知ってる。
「うちもディスィーヴの守りの家門だもの。目的は同じよ。仲良くなるべきでしょう?」
「そうね。ボイアンシー辺境伯家は国防の要だものね」
と話しながら向かっていると。
「あら?幻のガオナー伯爵令嬢ではありませんか」
お友達ができました!