18.おやおや?
父様と踊った後は、予定通りライと踊る。
「ローレライ、次は私と踊っていただけますか?」
と手を差し出してくる。
「喜んで!」
令嬢たちの嫉妬を一心に受け、差し出された手を取る。
今日の私たちは、身長差をあえて出している。
私が低めのヒールを履き、ライもまたシークレットシューズを履いている。
「やっぱりその恰好似合うね」
「ありがとう」
「普段よくそれ隠せてるね」
それとは胸である。
「仕立て屋とメリッサの努力によってね」
私たちは双子みたいに育ってきたから、誰かが言ったらセクハラみたいな発言も受け入れられるのである。
「普段苦しくないの?」
「多少は苦しいわよ」
「そろそろ無理なんじゃない?」
とライは影武者はそろそろ無理なんじゃないかと言っているのだ。
「うーん。たぶん父様もそろそろ考えてると思う」
「そろそろローレライの縁談も考えないといけないもんね」
「あなたもね。おかげさまで私は今背中が視線で痛いわよ」
「「はあ」」
とめんどくさい問題を抱えている私たちはため息を同時に吐いたのだった。
◇◇◇
会場中が王子と幻の令嬢、ガオナー伯爵令嬢とのダンスに見入っている。
王子と令嬢は息ぴったりに難しいステップを踏み、踊りこなしている。
初めてとは思えないほどに息の合ったダンスに会場中が魅了される。
ダンスもさることながら、美しい王子とこれまた美しいご令嬢の姿もまたため息が出るほど絵になっており、ほとんどのご令嬢が勝てるはずないと心の中で王子の婚約者になるのを諦めたのだった。
◇◇◇
またあるところでは、王子と踊る令嬢に皆とは違う視線を向けている者がいた。
今までの違和感。
王子であるのに、何か違うような。
そんな違和感を感じていた。
(まさかそんなことって・・・。今までの違和感はこれだったのか!)
ご令嬢から目が離せない。
今日お2人で並ぶまで全く気付かなかった。
誰が想像するだろうか。
ご令嬢が王子の影武者をしているなんて。
親父!黙ってたな!
だが、トップシークレットだろう。
帰って確かめるしかないか。
◇◇◇
あの視線。気付いたか。
勘がいいな。
さすが団長の息子だ。
しかし、私の娘は美しく育ったな。
どこに出しても恥ずかしくない娘だ。
虫が付かないうちに縁談でも用意するか?
だがレイが嫌なら、それは私としても不本意だしな。
レイには今まで以上に幸せになってもらいたいからな。相手は大事だ。
初めは、娘を王子の身代わりにすることに何の罪悪感も無かった。それがガオナー伯爵家の役割だからだ。
幸い娘も嫌がらなかった。
それが娘が育っていくうち、刺客がやってくるたびに焦燥感に駆られるようになった。
リードが言うように、私も隣国との関係を改善したいと思うようになった。
そろそろ、あちらの国も動くだろうし片が付いたらもうレイも自由だ。
早く自由にしてやりたい。
父にもちゃんと父として子を思う感情がありました!