17.父とのファーストダンス
陛下にご挨拶だ。
まあ今更ではあるが、あたかも久しぶりかのように振舞う。
「ローレライ、デビュタントおめでとう。今日は一層美しいな。リカルドも誇らしいであろう?」
「ありがとう存じます。陛下」
「ええ。無事デビュタントを迎えることができ感無量でございます」
と陛下とそこそこ親しいのだぞとアピールし、王妃殿下の前へ。
「デビュタントおめでとう!ローレライ!やっぱりとっても良く似合うわ!美しくってよ!」
「ありがとう存じます!王妃様のお見立てのおかげでございます」
「伯爵も美しく育ちすぎて困るわね!釣書が山のように届くわよ」
「ええ。困ったものです」
と王妃様と懇意であり、ドレスも見立ててもらったと周知する。
父、少しは謙遜しろ。
「ローレライ!デビュタントおめでとう!」
「ありがとう!ローリー様もおめでとう!」
「そのドレス似合ってるね!いつも以上に綺麗だよ」
「ありがとう!ローリー様も素敵よ!」
「後で踊ろうね」
「ええ」
とそこそこ会話をしてライとも仲良しアピール。
公の一応様は付けるが、愛称呼びも欠かせない。
これで貴族たちは、やはりガオナー伯爵家と王家は仲が良いのだ。
と印象付けられただろう。
背中からチクチク刺さる視線は無視する。
まあね、王家と懇意だとライの婚約者になっちゃうんじゃないかと思われてても不思議ではないよね。
ちなみにそれは絶対にありえない。
何故かというと、毒を摂取しすぎており子供ができるかどうかの心配があるからというのが大きい。
王家ともなると後継ぎ問題は重要だ。
体中もあっちこっちに傷跡があるしね。
そもそもほぼ同じ顔なのだから、好きにはならない。
権力が偏りすぎるのもまた一つの理由だ。
ライだって自分が危険な時、常に自分を庇って飛びだす王妃なんて嫌だろう。
ということで絶対!100%ありえないのだけど、周りはそんなの知らないから従兄妹同士だし有り得ると思っているだろう。
私に攻撃がくるだろうなー。
そう仕向けておいたしね。
ライには是非とも、嫌がらせなんてしない素敵なご令嬢と結ばれて欲しい。
ファーストダンスを父様と踊る。
父はもちろんダンスは上手い。
「レイももうデビュタントなんだね」
「父様どうしたの?」
「いいや、早いなと思ってね。大きくなった」
「何それ!年寄りくさい」
「お前には辛い人生を歩ませたと思っているんだ」
「そんなことないよ。楽しんでるし、人生って言ってもまだ15年じゃない」
「これからはお前にも幸せになってほしいと思ってるよ」
「今も幸せだと思ってるわよ?うちは家族仲も良いいし会話も多いじゃない。私、父様と母様のもとに生まれて嫌だと思ったこと一度も無いよ」
「そうか・・・」
なんだか父様が感慨深そうにしている。
私が言ったことは全部本当なんだけど、父様はそう思ってなさそうだな。
周りから聞かれても違和感のない会話ではあるが、ダンスを踊りながらする会話では無いよね。
「うちの娘は人気だね」
「なに?」
「次のダンスの相手にと令息たちがこちらを見てる」
「幻の令嬢ですから」
「殿下の次はもう踊らないように。体調が優れないとでも言いなさい」
「はーい」
と父様とのファーストダンスを終える。