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16.デビュタント


デビュタント、それは15歳を迎える令息・令嬢が王宮に集まる特別な日。

全員が真っ白な衣装を身に纏い、そわそわわくわくその時を待つ。

そうして爵位の低い者から会場へ入場していくが、皆が皆その一家の入場を気にしていた。

"ガオナー伯爵家”その一家は謎に包まれており、デビュタントを迎える令嬢に関しては誰も一度も見たことのない幻の令嬢がいるからだ。


一度、令嬢たちが王太子殿下に尋ねただけで何一つとして情報が回らない。

本当に存在するのだろうか?

存在したとして、果たしてデビュタントには出られるのだろうか?

病弱とのことだが、表に出すことができない容姿なのではないか?

婚約者はいるのだろうか?

それぞれが色んな思いを抱きつつ、ガオナー伯爵令嬢の入場を待つ。


まだ入場していない公爵家・侯爵家の間を縫うようにガオナー伯爵と令嬢と思われる人物が扉へ向かう。

初めてお目にかかるその姿に、皆が視線を奪われる。

令息たちはぼうっと熱に当てられたように令嬢を見つめ、令嬢たちはハッとしたあと悔しそうに顔を歪めるものが多かった。

縫うように進んでいた彼女らの道が一斉に開き、皆が扉への道を先導するかのように動くのだ。

そして扉の前へたどり着く。


「ガオナー伯爵リカルド様、ご令嬢ローレライ様のご入場です」


と扉が開く。


下位貴族たちもまた、想像以上の美しさに呆気に取られる。




◇◇◇



私は父様のエスコートで入場する。

父様は初めてのちゃんとした令嬢姿に思うところがあったのか、目を潤ませているように見えた。


ギリギリに到着した体の私たちは高位貴族の方々の間を縫うように進むが、急に扉までの道が開いた。

まるでモーゼのアレのようである。

皆急に静かになって、こちらを見ている。

ああ、初めてだもんね。公の場に出るの。

ということで優しく微笑む、淑女の笑みを張り付ける。


名をコールされ、扉が開く。

今までざわついていた会場内から一気に音が消える。

今世初、渾身のカーテシーを披露する。



「父様、何か静かすぎない?」

と腹話術のように静かに問う。

「まあ、お前の姿を初めて見たのだから無理もないね」

ふうん。やっぱそうか。


「お前は自分が思っている以上に美しく育っているのだから皆驚いているんだろうね」

と父から補足が入る。

「父様に似てるんだもんね」

そう父は自他共に認める美形である。

しかも色気を漂わせて未だに色んなご夫人の目を奪っているのだと母様が誇らしげに語っていた。


「近寄ってくる男がいたら殴り飛ばしても良い。触って来ようとしたら潰してやりなさい」

とにっこり過激な事を言い出した。どこを?とは聞かないでおく。


「でも、ダンスは仕方ないんじゃないの?」

「私と殿下と踊って終わりにしなさい」

「いいの?」

「むやみやたらにダンスなど踊って勘違いされても困るしね」

確かに。父様の言うことを聞いておこう。


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