13.パーティー
まずは、挨拶回りから。
と言っても、挨拶に来るのを受けるだけなのだが。
穏やかそうな笑みを張り付け、同じことの繰り返しである。
だけど早くもライの婚約者の座を狙おうと娘がいる家は皆売り込んでくる。
そしてそんな父親が売り込んでくるような家の娘たちは、頬を染め上目遣いで見つめてくる。
残念ながらそんな攻撃は効かない。
こちらも女なのだから。
今回注意すべき人物が、一応祝いの体で乗り込んできている。
隣国ベルセルクの王太子だ。
「本日は立太子おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「王太子殿下は戦いに優れていると聞いてます。一度手合わせしたいものですねえ」
とにやりと笑う。
この隣国ベルセルクは、まさに実力主義国家で王族でも強い者が王になる。
この王太子も王族の中で一番の手練れだそうだ。
そしてこの国の人間は皆が脳筋気味であり、まさにこの王太子は脳が筋肉でできている。
だからこの国からは何も考え無しに、刺客がどんどん送られてくるのだろう。
「いえいえ。私など自分を守れる程度ですから」
「刺客など物ともしないと言うではないですか」
誰から聞いたのか。そもそも自国からたくさん送ってきていると言っているようではないか。
「刺客が大したこと無いのではないでしょうか?」
とすっとぼけてみる。
「っな・・・!!」
おお。ちょろい。自爆するところだった。
「私に来る前に、ほとんど防がれてますしね。私の護衛も侍女すらも優秀ですから」
にっこり笑ってやる。
「っっ!今日もその優しい笑みが崩れないことを願いますよ」
と刺客をたくさん入り込ませているというようなことを自分からバラしていなくなった。
うーん。馬鹿だ。
ちなみにうちの国、ディスィーヴにどんどん間者が入れるのもわざとだ。
それほどまでにうちの国の防衛力は凄い。
それを全部捕らえて、国交に役立てるのだ。
ファーストダンスを母上と踊って、とりあえずやらなければいけないことは終わった。
見えるところにメリッサがいないということは、どこかでやり合ってるのだろうな。
とのんびり考えながら、近くの給仕のものから飲み物を取り飲んだ。
あら。舌がピリピリする。これは毒だな。まあ私には効かんけどな。
「フレッツ」
と声を掛けると、フレッツは給仕を捕らえてこっそり出て行く。
それを見計らったかのように、ベルセルクの王太子が寄ってきた。
「護衛も無しに、危ないのではないですか?休憩室で国家間の話でもしませんか?」
と誘ってきたので、やや表情を変え笑みを張り付けるのをやめる。
「ええ。そうしましょうか。お気遣いありがとうございます」
と王族専用の休憩室に入った途端、刺客が襲い掛かってきた。
もちろん予測済み。
腕に隠していたナイフを投げ、顔に命中させる。
そして隙を与えず腹に一発、喉に一発拳を叩きつけ一応毒針も頸動脈に仕込んでおく。
すると今度は王太子自ら襲い掛かってきた。
もちろんパーティへの帯剣は許されていないが、部屋に隠し置いてあったのだろう剣を振りかざしてくる。
だけど、うちの騎士団で練習している私にとってそれは遅い。
剣筋を避けるが、薄く当たって血が出る程度に計算する。
薄く腕の服と皮膚がキレたところで、手首に蹴りをお見舞いする。
蹴られたことで剣を落とし、今度は素手で殴りかかってくるが私の方が強い。
軽々避けて、足の甲、鳩尾、喉と叩き込む。
しゃがみ込んだところで、勝負ありだ。