10.お小言
自室へ戻るとライが飛びついてきた。
「レイ!!襲われたんだって!?」
「うん。大丈夫だよ!ちゃんと生かしておいたから」
「違うよ!そいつの生死はどうでもいいの!」
え。どうでもよくないけど!
「もー!レイを心配してるの!!」
とぷんぷん怒っている。可愛い。
「大丈夫。怪我一つしてないよ」
「メリッサ本当?」
「はい。レイ様はお強いので」
「ならいいけど・・・」
とブツブツ言っている。
「ありがとう。心配してくれて」
心配してくれる人がいるというのは嬉しいものだ。
「お茶会の方はどうだった?」
「それがね!ローレライが存在するのかどうか、どんな令嬢なのかっていうのが今日の一番の話題だったよ」
「何でレイの話になったの?」
「さあ?一人の令嬢が会ったことがあるのかと言い出してね」
「実は毎日会っているとは言えないね」
「そう。だからね、病弱で噂されても気に病んで寝込むからそうっとしておいてって言っておいた」
「すごい深窓の令嬢をアピールしてる。刺客を怪我一つすることなく倒すことができる令嬢なのに」
「だって元々ガオナー伯爵家は代々病弱なんだもん」
「確かに。ルカもそうだもんね」
ルカとは私の弟ルカスである。
「ルカも深窓のご令息だね」
と笑い合う。
「けれど、レイ様はご令嬢たちの嫉妬を煽ったのですよ?」
とメリッサがチクっている。
「何て言ったの?」
「王子の口から、ローレライは病弱で表へ出られないのが惜しいほどの美貌を持っていると」
「はあ。レイ、役目が終わって令嬢に戻った時が大変になったね」
「私は別に問題無いよ。ライの婚約者候補が絞れていいじゃない。これぐらいで嫉妬にまみれる人間に王子妃が務まるわけないんだから」
「そうだけど、レイも令嬢に戻った時の幸せを考えなよ!」
「うーん。なるようになるでしょ。結婚に夢を持っている訳でもないし、最悪父様に無難な縁談でも持ってきてもらえばいいんだし」
「12歳で言うことじゃないねえ」
とため息を吐かれた。
「いいの。いいの。ライが先なんだから」
と自分の事はごまかしておくに限る。
しかし、12歳で結婚相手について考えたりするこの世界は私にとっては不思議。
皆ませてるというか、考え方が大人というか。
成人年齢が16ということもあるし、やっぱり貴族教育がそうさせるのだろうな。
まあ中身も子供のままの令息令嬢もたくさんいるが、さっきのお茶会での育ってない令息令嬢は今であれだと今後も期待はできない。
そんな世界なのだ。家の教育が将来を左右すると言っても過言ではない。
たぶん親もあれなのだろう。
その日はライのお小言を聞きながら、ライと2人でゆっくり過ごした。
きっと父が気を利かせてくれんたんだろうな。
あんなでもちゃんと心配してくれているのだ。