妄想の帝国 その92 ママ管理下コドオジ再教育制度
子孫繁栄という生物としてもっとも重要なことを疎かにしすぎたニホン国は経済大国から衰退へとまっしぐら。それを大いに反省し、うちでは威張る生活維持能力のない主に男性を再教育するという大胆な制度を施行した…
「ネト・キョクオさん、貴方のコドオジ度数は90と判定されました。よって、成人資格はなし、ママ管理体制下のもと指導となります」
「えええ!そんなあああ」
卒業指導官の言葉にネト・キョクオは驚いた。
「ど、どうしてです、なんで、僕は大学の成績も優秀、卒論だってきちんと締め切りに間に合わせ、規定も守り、内容もそこそこ。就活テストだって(なんだって、そんな馬鹿な結果になったんだ。オヤジのころはこんな制度なかったのに)」
キョクオの言葉に指導官は首をふり
「問題はそこではなく、生活維持管理能力の低さです。コドオジ度数判定検査での、家事援助を必要とする家庭での家事実技に、保育園での育児協力での点数は最低。米を洗剤で洗おうとするわ、計量カップと歯磨きコップを間違えるわ、炊飯器でご飯を炊くことすらマトモにできない。子供を抱き上げようとして途中で手を引っ込めてケガさせるわで、クレームの嵐です。今後あなたのせいで実習生受け入れがなくなれば、点数はマイナスになります」
「そ、そんな。たかが家事育が、し、仕事と何の(わーん、少子高齢化完全防止とかいって、なんで、こんな制度ができたんだ。昔はオッサンに媚び売ってれば出世できたのに。そのオッサンたちが馬鹿やりすぎて、こんなことになってオフクロも愚痴ってたけど)」
「あなた、本当に現在のニホン国の教育を受けてきたんですか?ニホン国人、いや、人類にとって一番重要なのは子孫繁栄、育児とそれを担う家庭を維持管理する生活能力でしょう。外での仕事はすべてそのためにあり、それ以上のものではありませんよ。外での仕事事期のために家庭を疎かにするなんて、前時代の少子化を進めたまさにコドオジ思考でしょう」
「そ、それは、授業でやりましたけど…(コドオジって、奥さんやら母親に家事とか育児やってもらって仕事だけやってるのがニホン国の男の大半だったんだあ、おまけに金の管理もできないで、奥さんや親が死んだらセイカツ全然できなかったとか。まあ下着の洗い方もわかんねーとか、子供を揺さぶりすぎて死なせちゃうとか、さすがにまずいけど。だってやれないんだよー、やったことないからかもしれないけど。そんなことやってたら、勉強も「仕事もできないんだよおお)」
「点数だけは取れたけど、重要性を全く理解しておらず、技能を磨くどころか、母親にやらせるだけだったというわけですね。やるべきことをさぼり、母親にまかせきり。それで家事も育児もきちんとこなしていた同期と比べられませんね」
「そ、その僕、本当は研究者志望なんです。学会のお手伝いもしましたし、卒論の内容が良ければ、家事じゃない生活維持管理能力が低くても関係ないって、き、聞いてたんですけど(ああ、教授にくっついて働いててよかった、マーあの教授も今じゃ全然力なくて前時代の頭固いコドオジその持って言われてるけど、一応教授だし。院の授業もまだもってたはずだし)」
「その点でもお話になりません。指導教授の言うことを良ーくは聞いているだけで、無難に当たり障りない程度。独創性もなし、抜きんでたアイデアもなし。よくできましたねーという感じで、目を見張るようなものはありませんね。出産後、わが子の世話をしていた時に予測できない赤ちゃんの行動から脳の発達に関するヒントを得たという同期の女性の卒論のほうがよほど研究者に向いてます。仕事の合間を縫い、睡眠時間を削ってしゃにむに卒論を書き上げたという50歳の清掃員男性のような情熱も感じられません。研究者としてはさらに点数が低いでしょう。さらに貴方の指導教授はパワハラで訴え、その訴えの正当性が認められたため、解雇予定です」
「ええ!(とはいうものの、確かに女は引っ込んでろ、みたいな言い方してたからからなあ。まあ、教授の間違いを真っ向から指摘して、学会で発表して新説打ち立ててそれのほうが世界で認められちゃったんだから、あの子のが正しいんだろうけどさあ。…ま、まずい、俺も止めずに、教授に逆らうなんて常識外れだとか言ったから同罪かな。こ、ここはこれ以上この話題はやめて、しばらく大人しく管理下に入ろう)」
「話を戻しますと、コドオジ度数70を超えていますので、成人としては認められません。よって、ママ管理体制下にはいり、後見人であるママの指導のもと成人としての生活維持管理能力、判断力を身に着け、その後コドオジ度数判定の再検査となるはずですが」
「その、ママ管理体制って、オフクロ、いえ、母の管理下ってことでしょうか(あー、うるさく言われんのか、嫌だなあ、でも、おだてたりすれば)」
「いいえ、貴方の生活維持管理能力の低さはお母様たちの教育にも一因があるようなので、AIか、配偶者、ああ、貴方には婚約者がいたのでしたね、本来は婚約者の方がなるはずですが」
「あ、そうです、アケミ、いやアケミさんにぜひ」
「では、彼女に連絡をとり…、いや、すでに連絡はいきまして拒否されてますね。ああ、失礼、最後の検査の点数をみていませんでした。前の実技の点数があまりに低いので、見る必要がないかと」
「な、なんですか、どうしてアケミ、いやアケミさんは拒否を(検査って、ひょっとして、あの雑談かよ、介護施設とか、保育園での。チクショウ、あのオッサンも試験官だったのか。ヤバい油断してつい本音をいっちまった)」
「はあ、エッセンシャルワーカーの軽視に女性蔑視に、さらに貧困層、弱者への偏見。根拠のない間違った男性優位思想に歪んだ自己愛もありますねえ。最終検査の判断能力がこれでは確かに結婚は考えますねえ。女性側が苦労するのは目に見えてます、モラハラ、パワハラ、下手すればDVもありそうですねえ」
「そんな、ぼ、僕は暴力的な男では(まー、そりゃ、私の言うこともちゃんと聞いて、家事分担とか言い出すアケミを黙らせたいとか思ったし、でもオヤジとか全然できなくても、ナントカってホントはダメとか言われても、昔は当たり前だったんだから、いーじゃん、うるさいこと言うなとか思う、だけじゃなくて言っちまったよ、アケミにも)」
「力をふるわない暴力っていうのもあるんですよ。本当にうわっつらでしか学んでなかったんですねえ。ああ、コンビニ店員やコールセンターでの異常クレームもあったんですか」
と指導官が呆れたように首をふる。
「そ、それはあっちが(しまった。腹立ちまぎれに、釣銭間違いだって怒鳴り散らしちまったし、ホントは俺が万札出したつもりで、千円で足りなかったんだけど、店長出せとか言っちまったから、押し通して。あとでビデオ確認されたのか。コールセンターは返品させろってねちねち言ったんだ、あっちの女が悪いんだ、事務的な対応しかしないし、もうちょっと忙しくて注文間違えた客の身を考えてくれても)」
「悪くないですね。すべてあなたの勘違いやゴリ押し。パワハラ、モラハラを行う可能性もあり、これは徹底的なAIママ管理が必要ですね」
「それってどういう(う、噂には聞いていたけど、マ、マサカ全部管理)」
「ご両親の家から離れ、AIママの管理の下、生活全般一から学びなおしです。こちらの指定の会社に就職し、職場でもあるべき成人の姿を働きながら学び、帰ったら即座に家事全般を学ぶ、週末は保育、介護の現場に研修。適度に休みもとらせますが、それもAIママが指導します、無駄に怠けっぱなしにならないよう娯楽も管理。オカシナ思考にならないよう書籍、テレビ、ゲーム、SNSなどはAIママの許可されたもののみ許可です、何しろあなたは再教育が必要な体は大人で精神は幼児のコドオジですから」
「せ、せめて、親元で~(隠していた発禁焚書でネトキョクウといわれたモモタンの小説とかも読めなくなるのは嫌だああ、デタラメ異常思想本として見つかったらとりあげられるう、もう手に入らないのにいい)」
「貴方のこの度数、最終検査の酷さから、親御さんも管理下に入ります。すでにご両親の職場にも連絡がいき、お父様もコドオジ度数検査を受けています。…残念ながらかなり高い度数がでそうですね、貴方と同じAIママ管理下に入ることになるでしょう」
「ええ、オフクロがいるのに!(配偶者が管理するんじゃ)」
「夫がコドオジなのに放置して、増長させ、さらに息子もコドオジにしたということでお母様の管理能力はゼロとみなされます。以前のニホン国でしたら良妻賢母とか言われていたのでしょうが、それがニホン国の衰退の一員です、家族がどうしようもないなら、本人に訴え、それでもだめなら周囲の力を借り、それでもだめなら見捨てるぐらいでないとコドオジは治せません。仕方がないと甘やかして、対策を打たなかったのが、このニホンの凋落です。耐えるだけが美徳ではありません、きちんとした対策を講じ、変えようとしなければ、間違ったことを肯定しているのと同じ、すなわちコドオジの共犯ですから」
「お、オフクロは」
「もちろん、管理下に入ってもらいます、本人に説明中…。案外、素直に受け入れたそうですよ。まあ我がままで何もしない夫と息子の世話に疲れた、とか言っているとか。アナタ方から離れることになってホッとしたようですね。施設に入るとはいえ、手のかかるコドオジの世話から解放されるし、多少の自由もありますからねえ」
と淡々と話す指導官に対し、ゲームや本を読み散らかし、やりたい放題だった我が家を追い出され、ママ管理下のアパートで厳しくしっかり再教育されることを思うとお先真っ暗なコドオジのネト・キョクオであった。
まあ、人類というのは一応生物でして、生物というのは遺伝子の乗り物というか、子孫を残すのが最重要らしいですが、それに対することがほとんどどころか自分の生活維持能力もない人々がでかい顔して威張り散らしてると、どうなるか体現してる国があるようですねえ。いつ真っ当になるんでしょうねえ。女性や若者たちが呆れ逃げ出す前だといいですねえ。