8話
体育祭の実行委員会に入った陸の事を知ったみのりも自分もと
ゴリ押しして入ったらしい。
「お前らな〜なんでそんなもん引き受けてんだよ!」
「蓮はやらないのか?」
「俺は競技だけで十分だよ…つーか、陸!お前また競技でない
気か?」
「そうそう、人数的に余るからさ〜」
「余るって言っても交代すればいいだろ?」
「ほらっ、僕運動苦手だし?」
「怪しいな〜?」
「あ、そうだ!先輩に呼ばれてたんだった。ちょっといってく
るね」
そう言って逃げ出していった。
蓮はつまらなそうに言いながらみのりを見た。
みのりの方は自分の担当の競技のルールを確認していた。
「お前が仕切るのかよ?ルールわかってんのか?」
「わーってるわよ!今読んでるんだから静かにしてよ!」
「ふ〜ん、つまんねーの!」
運動音痴のみのりには競技に出なくていい恰好の理由だった。
それでも少し残念に思ってしまう。
運動神経はよかった陸がなんの競技にもでないのだ。
「陸が出たらかっこいいんだけどな〜」
「それは本人の目の前で言えよ?」
「言えるわけないじゃん。陸が決めた事なんだもん…」
陸にも告白すらさせてもらえなかったみのりは気持ちをいまだ
に引きずっている。
「はっきり言ってフラれてこいよ!」
「なんでフラれる前提なのよ!ムカつくわね!」
「だって…あいつ誰とも付き合う気はねーって言ってただろ?」
「それはそうだけど……」
「だったらさっさと玉砕してこいよっ!」
「もう、マジで最低!あんたなんか嫌い!大っ嫌い!」
みのりが怒り出すと出ていってしまった。
一人残された蓮はため息しかでない。
「大っ嫌いって…俺だって何度も言ってんだろ…少しは気にし
ろよな…ばか」
帰りに蓮の下駄箱の中には一通のラブレターが入っていた。
隣のみのりと陸が覗き込むなか、ビリッと破ると近くにあった
ゴミ箱へと投げ込んだ。
「読まないのか?」
「なんで読むんだ?顔も見せないような奴に興味ねーよ!」
「蓮って最低!勇気出して書いたかもしれないじゃん!」
「そんな勇気いらねーよ、俺は今一人にしか興味ねーし…」
「あっそ…どんな子なのかしらね。顔が見てみたいわ」
「目の前にいるだろ…」
「えっ……」
蓮に言われてみのりが立ち止まる。
いつもの冗談だと思い直すと、背中をありったけの力で叩いた。
「もうっ、冗談でもそう言う事は言わないでよねっ!全くいっつ
も揶揄うんだからっ!」
陸も蓮も一瞬で察した。
みのりは全く理解していない…と。
「頑張れよ…」
「なんか、俺の方が折れそう」
「まぁ〜、ああゆう奴だからな…うん」
陸に言われると少し苛立ちを覚える。
みのりが陸に惚れてさえいなければ問題は簡単なのに。
他の誰かだったら無理やりにでも奪い取っていた。
でも、相手が陸では何も言えなかった。
みのりはいまだに蓮の気持ちに気づいていないのだった。