モフモフ騎士団とお手伝いさん 2
厨房についた私たちが薪を差し出したところ、大げさなほどに料理長に感謝されてしまった。
……それは、そうよね。前線で働く騎士様に、仕事を手伝わせてしまうなんて、いけないことだったわ。
「……ジン様。やっぱり、今度から手伝っていただかなくても大丈夫です」
「えっ! 何か問題がありましたか?」
「問題? いいえ、ただ、私の仕事を手伝わせてしまうなんて、申し訳なかったと思いまして……」
「……そうですか。そういう理由であれば、今後もぜひ手伝わせていただきますね?」
えっ? 私の説明に、何か不備があったのかしら。伝わっていないようだわ?
「えっと、あの」
「さ、朝食にしましょう」
厨房に早めに薪を届けることができたので、朝食の用意を手伝おうとしたのに、全力でお断りされ、なぜか食事の席にいつの間にか座っていた。
「あの……。私は、お手伝いで」
「はいっ!」
「…………お肉」
目の前には、なぜか朝から焼き上げられていた、串に刺さったお肉が差し出されていた。
お肉なんて、本当に久しぶり。
第一騎士団の遠征についていって、自軍とはぐれてしまったとき以来……。
いつも一緒にいて私を守ってくれていた聖女付きの騎士、ノルン・ウィンド卿が、これしか用意できず、お許しを、と申し訳なさそうに差し出してくれた以来のお肉だわ。
「おいしい!」
一口食べたお肉は、柔らかくてジューシーで、ほどよい塩加減とスパイシーさで、とても美味しかった。
……ウィンド卿は、お元気かしら?
私のそばにいつもいたのだもの、責めを負っていないか心配だわ……。
幸せな毎日に浮かれてしまっていたけれど、自分のことばかり考えていたことに気がついて猛省する。
アラン様なら、ご存じかしら?
真剣に考え事をすると、周りが見えなくなってしまうのが、私の悪い癖なのだろう。
気がつけば、お皿には三本ものクシが置かれていた。
いつの間に、三本も食べていたのかしら。
「豪快な食べっぷりですね! ぜひ、昼食もご期待下さい!」
なぜか、挨拶に来てくれた料理長。
あら? お昼もここで食べる流れになっているのかしら。
「あの、私はお客様ではなく、お手伝いで……」
「そうですか。まあ、たくさん食べてくださいね」
「えぇ……?」
なぜなのかしら、ここにいる皆さまは、どなたもとても優しくて、なぜか私のことを優遇してくれるものだから、戸惑ってしまう。
こんな風に、周囲の皆さまから温かく、優しく接してもらうなんて、お母様が亡くなってしまってから、初めてかもしれないわ。
幸せをかみしめると同時に、ますます、辛い日々のなかで唯一優しかったウィンド卿のことが心配になってしまう。
私は、なんとかして、情報を得ようと心に決めたのだった。
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