第十六話 門下生第一号
事前に配布された電子パンフレットによると、淤能碁呂島は八つの区画に分かれているという。
ゲーム内イベントのため。単調さの緩和のため。
それらの理由で、各区画はそれぞれアミューズメントパークのようにテーマが設定されているらしい。
工場や倉庫群が立ち並ぶ工業地帯をイメージした区画。
水路や人工林などを用いて作った自然豊かな公園。
昔の高速道路をイメージした立体交差のハイウェイ。
果てはサイバーパンクに登場するようなスラム街を連想させる、ネオン飛び交う背の高い雑多な街並み。
などなど。
中央区にはリゾートホテル八尋殿や、トーナメントバトル用のスタジアムが設置されている。
新人たちの居住区は北西部の港付近にあり、そのほかにも様々な場所に居住区が存在するという。
中枢である天御柱付近など、スタッフ以外立ち入り禁止となっている場所がいくつかあるが、それ以外の行き来は自由だ。
島内はシャトルバスが定期的に運行しているため、それを利用するのもアリだろう。
マンションのラウンジで、ユウナたちと別れたあと。
さて今日はどこから回ってみようかなと思いつつ、レキは居住区画からほど近いベイサイドを散策する。
遊歩道は、潮風が気持ちいい。本土では高い壁に囲まれているため、海岸線に住まいを置いてもこうして海が見られることはまずない。
道路と波よけの白い壁、その向こうに見える青い海と青い空。それらが爽やかな気分にしてくれる。
はずなのだが。
――やっぱり尾けられている。
「…………」
後ろにいるのは、先ほど別れたユウナ・ツワブキとアイドル歌手の『HA=REN』だ。
二人は一定の距離を保って、後ろを付いてきている。
これでは昨日の焼き直しだ。いや、昨日のようにこそこそしているわけではなく、堂々と後ろをついてきているため、厳密には焼き直しではないのだが、後ろをただ付いてこられているというのはどうにも据わりが悪い。
レキが軽く肩越しに軽く見返ると、ハレンが頭に手を当てて、呆れた素振りを見せているのが目に入った。
ということは、これもユウナの意志なのだろう。呆れのため息を吐きながらもなんだかんだ付いてきている姿は、さながら妹のわがままに付き合う姉のようにも見える。
一方でユウナの方はと言えば、心なしか視線に力がこもっているようにも感じられた。
レキは尾行の元凶と思われる人物に向かって振り返る。
「あのさ」
「ひゃ、ひゃい!」
「いくらんなんでもストーキングはよくないと思うぞ」
「い、いえ、別にこれはストーキング行為というわけではなくてですね」
「黙って付いてきたら似たようなもんだろうが。住んでるマンションまで特定してたし、もしかしてそう言う趣味があるのか?」
「そそそ、そんなプログラムは私の中に存在しません! それは誤解のある認識です!」
あわやストーカー認定させられそうになったユウナは、身体の前でわたわたと手を振っている。たわわなボディが揺れた。
「で、用件は?」
「あ、あの、もしエネミーとバトルをするのでしたら、見学したいなと思いまして……」
ユウナは「お願いします」と言って大きく頭を下げた。
見学ということは、戦っているところを見て『学びたい』ということか。
やはり先ほどの、弟子にして欲しいという思いがあるためだろう。
随分と熱心なことである。
「まあ、俺は構わないけどさ。それならつきまといみたいなことするんじゃなくて、きちんと了解取れって」
「はい、すみません……」
レキがそう言うと、ユウナは申し訳なさそうに小さくなった。
ハレンがユウナに、痛くなりそうな視線を向ける。
「ほらね、言った通りじゃない」
「はい……ごめんなさい」
ユウナはそう言いながら、こっちにペコペコあっちにペコペコ。さらに小さくなる。積極的なのか控えめなのか、なんだかよくわからない性格をしているものだ。
そんな中、ハレンが切れ長のまなじりを向けてきた。
「君はいいのか?」
「いいって、なにが?」
「見学の許可なんて出したら、ユウナに動きを盗まれるかもしれないとは考えないのか?」
「ああ、それはいいんじゃないか? どうせこのままダラダラやってても、そのうち配信がかかるだろうからな」
「随分な自信だ。まあ、腕前は認めるけど」
「それはどうも」
そう言うと、ハレンが胡乱そうな視線を向けてくる。
「……なんか随分つまらなそうに見える。そんな調子なのにどうしてここに来たんだ?」
「あー、妹にチケットをプレゼントされてな」
「プレゼント?」
「まあ、運営の社員と渡りをつけてくれたんだよ。俺がつまらなさそうに過ごしてるから、楽しんで来てほしいって」
「いい妹さんですね」
「ん。おバカだけど優しいやつだよ……おバカだけどな」
「そこ強調するところ?」
「お兄ちゃんとしてはそこがすごく心配でさ……」
レキは昨夜の、こころがひゃっほーしながらノリノリで通話する姿を思い出す。
こころは終始あんなノリなのだ。心配に思っても仕方がない。
しみじみとそんな話をする中、ふとどこからともなくロックな音楽が流れてきた。
激しい音楽だ。特にエレキギターの主張が強い。
これには聞き覚えがある。昨日、ハレンが正面広場で歌っていたものと同じ楽曲だ。
そんなことを考えていると、ハレンがポケットから音源を取り出す。
デコレーションされた携帯端末の一部がぴかぴかと点滅し、連絡が入ったことを主張していた。
ハレンが大きなため息を吐く。
「ユウナ、ごめん。急に仕事入っちゃった」
「あ、はい。行ってらっしゃい」
ハレンはユウナに「ごめんね」と言うと、少し離れてから靴の爪先で道路をトントンと叩く。すると、彼女が履いていた自走シューズが起動。シュルシュルというトルク音が響かせ、オムニホイールが回転し靴底から火花が散った。
ハレンは力を溜めるようにしゃがみながら、シューズに触れて何らかの操作をしたあと。
彼女は目的地に向かって颯爽と滑り出していった。
「まるでスケートだな」
「レキさんは、自走シューズを装着したことは?」
「俺もあれは子供の頃に履いたっきりだな。そっちは?」
「私はあの手の装置に適合するためのステータス条件をパラメータが満たしていなくて……」
「上半身のバランスを取るのが難しいとはよく聞くな」
そんな話をしている間にも、ハレンはかなり遠くまで離れて行っている。
「にしても、すごい速度だな。改造してるのかあれ?」
「特注品だそうです。お給料以外にお仕事で貰えるVPを使って購入したそうです」
「よくもまああの速度で転ばないもんだ。すごいバランス感覚してるよ」
「ハレンちゃん、ああ見えて身体パラメータが高いんです」
「珍しいな。いや、仕事柄ってのもあるんだろうが」
「同じアイドルでも、ハレンちゃんみたいに動ける方は稀らしくて」
稀……それもそのはずだ。未来ではすでに歩行の重要性が薄れている。
都市には移動する床が張り巡らされ、自動運転の車両が定期的に運行し、ビルとビルの間にはロープウェイを思わせるケーブルラインがあちこちに張り巡らされている。歩道を見れば、自走シューズはもちろんハンドルなしの立ち乗り二輪車や電動のキックスケーター、スケートボードが辺りを跋扈している。
足腰の弱さは未来人にとってすでに社会問題を超えて定着化。長時間および長距離の歩行や走行はアスリートの持つ特殊技能とまで言われ、衰えれば義肢と取り返ればいいなどと声高に叫ぶ輩さえいるほどだ。
むしろ登山のために義肢にしました、なんてのも昨今では珍しくない。
ハレンはステージでダンスも行うため、まず足腰が弱いということはないだろう。
あのバランス感覚だ。体幹を徹底して鍛えているに違いない。
一方ユウナは彼女の身体能力がうらやましいのか「私にもあれくらいのジャイロセンサーが搭載されていれば……」などと呟いている。
彼女の背中を見送ったあと、ユウナに訊ねる。
「アイドルさんとは、いつも?」
「ハレンちゃんのお仕事がないときは大体一緒です」
「仲良いんだな」
「はい!」
ユウナが嬉しそうに破顔する。それだけ仲良くしているのだろう。
ふと、彼女がぺこりと頭を下げる。
「改めて、ユウナ・ツワブキです。二期目の受け入れで淤能碁呂島に入島してプレイヤーになりました」
「レキだ。知っての通り昨日来たばっかりの新人だ」
「見た限り、新人とは思えない動きでした」
「そりゃ剣術は経験者だしな」
「ではレキさんはソキルをプレイしていたのですか?」
「いや、そっちはちょっと触ったことがあるくらいでほとんどやってない。さっきも言った通り、武術の経験者だからってことだ」
「なるほど……そうだったんですね」
「それで結局のところ、見学ってのはやっぱりさっきの話の延長なのか?」
「はい! レキさんの動きはとても衝撃的でした! 最初に剣技を認知したとき、電子脳に迷走電流が走って、演算領域に一瞬空白ができたくらいです!」
「お、おう……」
AI知性体独自の風変わりな表現に、圧倒される。
それは回路的に大丈夫なのかと問いたいが、活動に支障がないから問題ないのだろう。
ユウナは先ほどの青髪メイドさんよろしく、眼球型の視覚センサーを潤んだように輝かせている。
「あの、先ほどもおっしゃられていましたが、レキさんの使う武術は一体どういったものなのでしょう?」
「どういったもの、ね。俺のはいわゆる古流って奴だな」
「コリュウ、ですか?」
「いまから数えると……そうだな。千年以上前に生み出された武術かな。銃がまだ火薬を詰めて丸い鉄砲玉を撃ち出す頃の、武器の主流が剣や槍、弓だった時代のものだよ」
「そ、そんなに古くからある技術なのですか!?」
答え合わせをすると、ユウナは驚愕に目を見開いている。少々オーバーなリアクションに見えるが、AIたちはこういう風にわかりやすいアクションを取る者も多い。
「そんなに驚くほどか?」
「はい……古くから存在する剣術で調べても、出てくるのは乙海流か黒月流か、もしくは海外の剣術くらいですので」
「ん。そうだな」
ドイツ式、イギリス式、イタリア式……海外はその辺、復元したものをうまく残せていたらしい。
しかし、日本では刀を使う文化が失われ、剣術と言えば直剣を扱うものが主流となった。
先ほどユウナが言った乙海流が直剣を使うし、黒月流はサーベル術だ。
「レキさんは一体どこでその古流というものを学習したのですか?」
「いや、どこにも習っていないよ」
「どこにも……レキさんの家で記録したものを引き継いだわけでもないのでしょうか?」
それはある意味では正しいが、彼女の問いの答えにはならないだろう。
確かに前世では家系的なものだったが、生まれ変わった後に覚えたものではない。
「いいや、俺生まれは試験管だから」
「しけ……では年齢的に第五次人口減少化対策プログラムの」
「そうそう、それだ。だから家族は同じ試験管生まれの妹と、ずっとお世話してくれた家政婦さんだけなんだ」
「でもそうなると一体どういうことなのでしょう?」
それに関しては自分もよくわからない。昔も理解にあまることが多かったが、まさか仏教よろしく転生したなんてことが実際にあるとは思わなかった。
「ほんと、どうしてなのかね? やっぱり鹿島の神様の思し召しって奴なのかなぁ」
「神様、ですか」
「AIたちで言うゲイルマンみたいなもんさ。俺にもよくわからんから説明できん」
そう言うと、ユウナはどう捉えたのか。
「……つまりは、秘匿事項ということでしょうか」
「そんなとこにしておいてくれ」
「むぅ」
ユウナはちょっとむくれたように頬をぷっくりさせる。
態度がどことなく子供っぽい少女AIだ。
彼女とそんな話をしながら歩いていると、ふと人だかりを見つけた。
観客のエキサイトぶりは激しく、金物が打ち合う音も聞こえてくる。
ゲーム領域が展開されているということから、どうやらバトルをしているらしいことがわかった。
おそらく人だかりの正体は、見物に集まったギャラリーたちだろう。
「……レキさん、ちょっとよろしいでしょうか? 勝手に付いてきて図々しいということは、承知しているのですが」
「あれか? 別に構わないが」
ユウナはバトルに興味があるらしい。勉強熱心なことから、他人の立ち合いが気になるのだと思われる。
人垣の合間を進んだ先では、女と男が戦っていた。
女の方は、大人の女と少女の中間くらいの歳の頃。少女の持つあどけなさと、大人の女が匂わせる魅力が同居した風貌をしている。
髪は鳶色で、毛先に向かうほど濃い青色を映し出すグラデーションカラー。
瞳は鋭く青く、少しのことでは動じないような落ち着き払ったまなざしを差し向ける。
服装は軍服をイメージさせる造形で色は白。金色の飾緒が垂れ、エンブレムを思わせる社章が付いている。他にもスカートや羽根付き帽子、ネクタイ、黒ストッキングなど。日本ではなく海外の軍装を連想させる趣がよく目立つ。
全身から自信がにじみ出てきているかのように、堂々とした立ち振る舞いが特徴的だ。
剣撃も力強く、一撃一撃が鋭く重い。
動きも運動力学の基礎に習ったような、どことなくシステマチックな動きに見える。
一方男の方はといえば女の方に押されっぱなしだ。力も速さも、勝てている部分は一つもない。彼我の実力差は明白と言える。
おそらくランクも大きな差があるのだろう。
「いい動きだ」
「はい」
やがて、女と男の立ち合いが終わった。もちろん結果は女の勝利だ。
ギャラリーが女に向かって「皇帝」や「陛下」、「カイザー」などと呼びかけている。声音はどれも高くて黄色い。勝利を祝福しているようでもあり、彼女を信奉しているようでもあり。その人気の高さがよく窺える。
それもそのはず、女の方は、島内外を問わずに有名人だ。
レキも彼女のことはこのゲームにかかわらず、知っている。
リンドウ・ココノエ。日本の二大電子産業の雄、『帝王重工』がこれからのAIの先駆けと銘打って製作した新機軸AIだ。
芸術方面への優れた感性。
科学分野での新理論の提唱。
天才AIとして、様々なメディアへの進出を果たしている。
帝王重工製AI。電子脳の規格の通称。ときにスポーツ選手などに付けられる異称。そしてその誇り高い立ち振る舞いから、付いた呼び名が『皇帝』だ。
彼女は帝王重工が開発した新型人工躯体の性能を披露するため、これまで使用していた人工躯体を凍結し、満を持して淤能碁呂島へと入島。その際は様々なメディアが大々的に報道していた。
「私は帝王重工の技術力の高さを証明するべく、ここにきた。私はランキング一位となり、戦闘データの取得、技術習得にもその適性があることを証明してみせる」
インタビューで言い放った言葉は、各方面に衝撃を与えるものだったという。
その言葉通り、彼女は武術関連の学習を一切せずに、この淤能碁呂島に乗り込んだ。
それまで武術に触れていなかったため、当たり前だが入島当初は敗北を重ねていたようだが、しかし電子脳の学習機能のおかげか、約半年で誰もが期待した通り上位100位内に食い込むことに成功した。
現ランキングは68位。最初の敗北やスタートダッシュさえなければ、10位内は堅かったとさえ言われているほど腕が立つらしい。
リンドウが、ユウナのもとへと真っ直ぐ向かってくる。
「ユウナ・ツワブキ」
「リンドウさん……」
お互い、名前を呼び合う。
ユウナは彼女と知り合いのようだが、特段仲が良いというわけではないらしい。
相対するユウナの表情筋は随分と硬く、かなり緊張していることが見て取れた。
「ランキングは上がったか?」
「……いえ」
「そうか」
挨拶代わりの世間話に興じるということもない。ただ必要なことを訊いただけ。事務的なやり取りのようにも思える会話だ。
リンドウは、目を伏せるように応じたあと、ふと、こちらを向いた。
「ふむ。そっちは見ない顔だな。ユウナ・ツワブキの知り合いか?」
「ああ。って言っても昨日今日知り合ったばっかりだけどな」
「ということは新人か」
リンドウはそれ以上の興味はないらしく、視線を外してユウナを見る。
「我々AIにとって最も重要なのは学習だ。お前もここに目的があって来たのなら、悠長に遊んでいる時間はないぞ」
「……! わかっています!」
「なら、気を抜かず励むことだ」
ゲームの楽しみ方は人それぞれだし、遊ぶこと以外の目的を持ってここに来た者も多数いる。新興流派を広めるために来た人間もいるだろうし、ブライトは配信のため、AIはデータを取るためというのもあるだろう。
二人の話から察するに、ユウナも何らかの目的を持ってここに来たのかもしれない。
「それで、ランキングはどうなった?」
ユウナは痛いところを突かれたというように、わずかに身じろぎする。
「その、いまは……202位です」
「先日は109位まで迫ったと聞いていたが、あれからそこまで落としたのか」
「とても強い方に当たってしまって……」
「だが、そこまで順位を落としたのは失態だな」
「……っ」
ユウナは、悔しさや不甲斐なさを噛み殺しているといった様子。
そんな中、ギャラリーたちに対応していたリンドウのスタッフが歩いてくる。
眼鏡を掛けた少女と、いかにも営業マン風な優男だ。
眼鏡の少女は無表情で、優男の方は感じの悪い笑みを浮かべている。
ふと、優男がユウナを見て目を光らせた。
「これはFI社のAIではないですか。聞きましたよ? 順位を100近くも落としたようで」
「それは」
「まったく、FI社期待のAIが、随分な体たらくですね。これで本当に最新モデルの人工躯体を使っているのか疑わしいものです。それとも、その人工躯体は不良品だったのでしょうか」
「――っ! 私の人工躯体は不良品などではありません!」
「そうでしょうか? そうでなくてもそちらの社内では――」
優男が言いかけた折、エスカレートしていた悪口をリンドウが止めに入った。
「桂木、そこまでにしておけ」
「……承知いたしました」
桂木と呼ばれた男は、嫌みを引っ込めると大人しく引き下がった。
「……ユウナ・ツワブキ。次の勝負は、わかっているな?」
「はい」
リンドウはユウナに釘を刺すようなことを言ったあと、その場から去っていく。
ギャラリーたちも試合が終わったからか、解散し始めた。
ユウナは、リンドウが去っていた先を見詰めたまま。
「皇帝さんとは知り合いなのか?」
「はい……と言っても、そこまで会話ログは多くないのですが……」
ユウナから、思いつめた様子が見て取れる。
彼女とリンドウとの間には、なにかあるのかもしれない。
その様子を心配げに見ていると、彼女が勢いよく顔を上げた。
見上げる顔が、瞳に映る。その目の奥には火が灯っていた。
「あの、レキさん!」
ユウナから、訴えかけるようなまなざしが向けられる。
レキも、是が非でもという目的を持ってここに来たわけではないのだ。
実際のところ、まともに立ち合いを楽しめるかどうかもわからない。
それならば、後進の育成をするというのも悪くはないだろう。
どうもこういった熱意に弱いらしいなと、レキは内心で諦めのため息を吐いた。
「……わかったよ。だが、教えたからってすぐ強くなれるわけじゃないぞ?」
「それでもかまいません! どうかよろしくお願いします!」
そんなこんなで、門下生第一号ができたのだった。




