腕立て①
腕立てをしていると、当然だが苦しいと感じる。ゆっくりと体を下ろして腕に全体重の負荷をかけるのだから。グッと下ろして二の腕に激しい刺激と苦痛が伸し掛かる。ジンジンとする。しかし、ああ、今この間にも確実に筋肉がついてきている。こういったマゾヒズムにも似た感情を頼りにどんどん腕立てをしていく。
しかし、15回を超えてくると腕が悲鳴を上げる。これ以上継続することを、腕が拒絶する。過度なストレスを与えることは、快楽ではなく拷問である。一回小休憩をする。そして、再開する目星をつけるのは何時が良いかとウロチョロしながら考える。そして獲物を狙うがごとく、焼き肉の最高の焼き加減を見極めるがごとく始め時を決め、再び腕立てをする。
しかし、今度は最初のようにはいかない。乳酸も蓄積され、前回のダメージが継続される中で腕立てをする。ズガンズガンと腕に刺激が走る。そして20回目残り10回。頭の血管が最高潮に活性化され、疲れがアドレナリンにかき消されて最高にハイになる。マイルス・デイビスのエレクトリック・ジャズのハイになる曲をかけてひたすらに腕立てを行う。もう曲と一体になりながらひたすらにアドレナリンをまき散らしながら腕立てをするのだ。そして30回目、ゴールだ。二の腕を曲げてみる。そうして少し山ができると、それはもう幸福だ。筋肉がまたついてくれたんだと!




