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アメノチハレ  作者: 秋月
20/33

宇宙

どうにも一日以内に投稿できない日が増えてますね……申し訳ない。

一日に収めるべく努力いたしますが、超過したさいはご了承ください。

 ゴウン、ゴウン、とエンジンの音が部屋中に轟く。


 外は真空状態であるために無音だが、空気の存在する船内ではそうも行かない。凄まじい駆動音を聞かされ続け、たまったもんじゃないと修理工(エンジニア)は聴覚フィルターを最高設定にした


「なんだってこう、船大工のやつらは、消音なんかを考えてくれねえのかね……」


 修理中で停止しているメインエンジンを見上げながら彼が呟くと、そりゃそうでしょ、と横から女の声がした。同僚だ。聴覚フィルターはエンジンの轟音はおさえつつ、人の声は通信で聞き取れるようになっている。


「重力圏を抜けるには加速が必要だからね。一グラムでも軽くしたいんでしょ。第一、こうして話せるんだから、まだマシよ」

「そりゃそうなんだが……まあ、言ってても仕方ねえか。そこのドライバーくれ」


 確認を終え、ドライバーでハッチをきっちりと閉めなおす。合図を出すと、メインエンジンがゴウンゴウンと揺れ始めた。


 大丈夫そうだ、と男が頷くと、同僚も小さく頷いて、エンジンルームから出ようと手でサインを作った。フィルターを最高設定にしても、メインエンジンの音は大きすぎて、人の声を掻き消してしまうのだ。


 金属製のドアを潜り抜けると、ずっとエンジン音を聞いていたせいか、通路はやたらと静かに感じた。


「うし、お疲れ。飯でも食うか?」

「ええ、そうしましょ」


 短く言葉を交わし、二人はなにもない空中をゆっくりと動き出した。無重力空間で歩く事は困難であるため、彼らは船に乗っている間、泳ぐように移動することになる。


 同じ船で勤務し続けて、早二、三年。二人はずいぶんと打ち解けていた。


 時折設置されている窓の外では、真っ暗な海の中、星々が輝いて見える。それを見ながら、彼女は何気なく口を開いた。


「なんか、宇宙(そら)に出てると、色々難しいこと考えちゃうよね」


 男もまた、窓から宇宙を眺める。命綱なしに外に出れば、二度と帰ってはこれないと考えると、ひどく恐ろしい眺めにも思える。


 しかし、静かな黒い海を眺めていると、心は次第に凪いでいく。やや経ってから、彼は同僚の言葉に小さく頷いた。


「まぁ、確かに。そういうのを考える時間は増えるよな」


 彼もそういう時間がある。知らなくても困らないような難しい考えが時折頭をよぎる時間が。


 彼女もそうなのだろうと勝手に納得していると、同僚は宙をすいすいと動きながら、首をかしげて、不思議そうに呟いた。


「何でだろうね。そんなに頭が良い訳じゃないのに」

「そりゃ、お前」


 窓が途切れる。食堂へのドアにたどり着くと、男は一度止まって同僚のほうを振り向いた。


「宇宙が広いからだろ。……あと、暇な時間が多いのもあるだろうな」

「あはは、確かにね。そこに"ご飯が安物だから"ってのも入れといてよ」


 くつくつと笑い合いながら、二人は食堂へ入っていった。

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