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アメノチハレ  作者: 秋月
19/33

寝落ちと難産のコンボ技で、更新が大変遅れてしまい、申し訳ありません。

今日の分を書けるかは分かりません。ご了承ください。

「先輩ってほんとダイス運ないっすよねえ」


 机に突っ伏した少女に、カードをシャッフルしながら彼は言った。


 机の上には、きちんと整えられた十枚ほどのカードと二つの(サイコロ)が置いてあった。


 様々な能力や出来事のカードが並べられており、あからさまに強いカードがそろっているものの、"残機"と記されたカードの枚数を見るに、どうもゲームの中での彼女は死亡したらしい。


 転がったサイコロは、どちらも上の面が1の状態で止まっている。俗に言う、一ゾロである。


 古今東西のサイコロを使う遊びに於いて、1のゾロ目とは大きな意味を持つ。有利不利は遊びによって異なるが、二人のやっていたゲームでは、"致命的失敗"を意味する。


「というか、一時間装備カード厳選して、いざラスボス戦でコレって……」

「言わないで……私だって好きでこんな出目なわけじゃないのよ……」


 顔だけを上げてそう言い返す彼女だが、その声に力はない。敗北回数は数え切れず、事実新入部員である青年も、既に三十回は部長である少女の敗北を見てきた。


「ふう。気を取り直して、残り時間は皆で出来るものにしようか。何かあったよね?」


 彼女が声を掛けると、部室に居た者たちがゾロゾロと集まってきた。手に手に自分の賽を持ちながら、次々にあれがやりたい、これがやりたい、と声を上げていく。


 うんうん、と部長は頷き、じゃあそれをやろうといってボードを引っ張り出してくると、一際大きな歓声が上がった。


 大きな机を囲むようにして、十数人の男女がひしめき合う。文学系であるはずの部室の中では、しかし、運動部にも負けない熱が集まっていた。




「にしても、先輩ってなんでそんなに運が悪いんですか?」


 時刻は十八時ほど。部活動も終わり帰り道、偶然同じ方向だった新入生が、部長に対して問いかけた。


「……ド直球で聞くね、君……」

「だって自分、こんな運が悪い人みたことないんですもん。気になりますよ」

「そりゃまあ、私より運の悪い人見たこと無いけどさ」


 私に聞かれてもねえ、と腕を組む少女。きっとそういう星の下に生まれたのだろうとは思いながらも、彼女はそれを嘆いたことはなかった。


 それもそうかと納得しかけた青年に、しかしふと思いついた様子の部長が、もしかしたらと言って、何気ない雰囲気のなか、悪戯する子供のような顔で笑った。


「私、サイコロの神様をぶん殴ったことあるんだよね」


 彼女は冗談めかして言ったが、しかしその笑顔には、かすかな陰りが宿っている。


 結局彼は、帰り道が別れるまでに、それが冗談だったのかを聞きだすことは出来なかった。

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