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81 18歳 9

「それで、承諾していただけました?」


 翌日、『うどんとクレープ』の店は定休日だったけど皆が集まっていた。

 エドが家族に会いにくることは内緒にしていたのに、私の態度で何かあると気づかれていたようだ。

 エドも私と話があるので朝早くから店に来ていたので、私たちは昨日の出来事を皆に話した。私がジムのことをはじめて「父さん」と呼んだことで、ジムの態度は軟化したかのように見えた。だがここからが勝負だとでも言うように、ジムはある条件を提示してきた。


「一応、承諾はしてくれたのかな。ただ、条件付きでね、これが結構厄介なんだ」


 そう、ジムの条件は私がこの王都で暮らすことだった。娘である私と離れて暮らしたくないだけの我儘なので、無視してもいいと思うのだけどエドは真面目だった。


「まあ、それは難しいわね」


 私から条件を聞いたサラは困った顔になる。


「どうしてだ? 王都で暮らせばいいじゃないか」


 ロックは皆が何を悩んでいるのかわからないようだった。


「それができれば問題ないのだが、私が受け継いだモンルート男爵の領地は王都から馬車で十日以上かかるところにあってね、社交シーズンに王都に来ることは出来るが常時王都で暮らすことは正直難しいな」

「男爵なのに領地があるのは珍しいな」

「領地と言っても、たいしたところじゃないよ。王都から遠く離れているし、特産は石炭だって話だ」


 石炭はどこでもとれる石なので、値段も安く、使うところも限られていて人気がなかった。


「石炭? 石炭がとれるのか?」

「ああ、そう聞いている。鉱山のほとんどが石炭らしい。田舎だから農業が盛んだが、それもこれといった特産品はないそうだ。とはいっても普通に暮らしていくには問題はない。資料を見た限りでは、領地からの税収は毎年偏りもなく赤字になったことはなかったよ」


 だが王都で暮らすと言うことにあると話が別だ。王都に屋敷を構えるには相当なお金が必要になる。なんとか買うことができても維持していくことができなければ話にならないだろう。


「石炭の埋蔵量が多くあるなら、新しい事業を起こしたらどうだろう」


 ロックの目が輝いている。石炭と聞いた時からだから、何か良い考えがあるのかもしれない。


「石炭で新しい事業が起こすのか?」


 エドが不思議そうに尋ねる。石炭は昔からある好物で珍しいものではない。今さら石炭を使って新しいものができるとは思えない、そんな顔だった。


「東の国ガルヴァルトで石炭列車というのが発明されたのを知らないか?」

「それは聞いたことがある。だがアレは最終的に魔石列車に変更されたと聞いている。石炭が列車に向いていなかったと聞いたが?」


 なんだ、石炭は向いてなかったのか。それでは石炭は使えないわね。


「だがアレは嘘なんだ。石炭は列車に向いていなかったわけではない。石炭の方が安価だが、ガルヴァルトは石炭があまりとれない国だから用意できなかっただけなんだ。それで魔石列車に変わったんだ」

「なるほど。ガルヴァルトと違って、この国は石炭がたくさんあるから良さそうだな。だが石炭列車の構造がわからないぞ。使用していないとはいってもガルヴァルトは教えてはくれないだろう」

「それなら大丈夫だ。その代わりと言ってはあれだが、何人か雇ってもらうことになる」

「技術者に知り合いがいるのか?」

「魔石列車になったことで、首になりガルヴァルトを捨てた者たちだ。石炭が多くあるこの国で再興しようとしたが、伝手もないものには冷たいらしくて話を持ち掛けても断られてばかりだと言っていた。諦めて国に帰ろうかとか話していたから、話を持ち掛ければ喜ぶと思う」


 エドとロックだけで話は進んでいく。私も列車という乗り物のことは聞いたことがあるけど、詳しいことは知らない。ただ馬車より早く走る乗り物で煙がすごいらしい。


「成功したらすごいことになるが、私だけでは力不足だな。父にも話してみるか」

「そ、それなら兄さまにも話してみてください。きっと力を貸してくれます」


 私が石炭列車の話を聞いたのは兄からだった。

兄はその列車という乗り物にすごい憧れを感じていたらしく、いつもより饒舌で目がキラキラしていたのだ。この話を聞けばきっと手を貸してくれるだろう。


「そうだな。上手くいけば国を巻き込んでの一大事業になるかもしれないから、侯爵家に話を通しておいた方が、話が早く進むだろう」


 こうしてとんとん拍子で話は進んでいき、その年の終わりにはセネット侯爵家とルーカス伯爵家とモンルート男爵家が共同出資した石炭列車の会社が作られた。


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