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77 18歳 6

「私は……」


 ドキッとした。何を聞かされるのかわからないけど、これで終わるんだなと思うと寂しい気がする。


「お待たせしました。桃のジュースです」


 店員の明るい声で、緊迫した雰囲気が霧散する。


「あっ、私もミックスジュースのお代わりをお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 エドは早速、桃のジュースを飲んでいる。


「すまない。緊張しているせいか喉が渇いて」

「エドでも緊張するのね」

「こういう場合は誰でも緊張すると思うな」

「こういう場合?」


 私は首を傾げる。


「プ、プロポーズをするときは誰でも緊張するものさ」

「ぷ、ぷ、プロポーズ???」


 え? どういうこと? エドはアネットと結婚するんじゃなかったの?


「そんなに驚かなくてもいいだろ。結婚適齢期の話を持ち出したのは早くプロポーズをしてほしいって意味だって聞いたけど、違うのか?」

「ええっ? それって誰に聞いたの? まさかアネットがそう言ったの?」

「いや、アネットではない」


 誰に聞いたのか追求しようとするとエドが挙動不審になる。視線があちこちさまよっている。まるで誰かを探しているかのようだ…。これって…。


「ま、まさかクリューなの?」


 肩の上に座っているクリューを見ると、横を向いている。明らかに視線を合わせようとしない。


「あ~、まあ、内緒って言われてたのに、すまない」


 エドが明後日の方向に頭を下げている。たぶんクリューに謝っているのだろう。 それを見たクリューはポンッとわざとらしい音をたててテーブルの上に腕組みをした姿で現れた。


『もう、全然内緒になってないじゃないか。せっかく教えてあげたのに、どうしてくれるんだい。このままだと僕はアンナに怒られちゃうよ』


 私は慌てて周りを見るけど、誰もクリューに気づいていない。見えているのは私とエドだけみたい。ホッとした。


「うっ、すまない。つい言葉がすべってしまって」

『ふう。なんだか君にアンナを任せていいのか心配になってきたよ』

「そんなこと言わないでくれ。絶対にアンナを幸せにするから」

『どうだかな』


 エドはペコペコと頭を下げている。私の目にはエドがクリューに謝っているように見えるけど、はたから見ると私に謝っているようにしか見えない。

 明らかに貴族の姿をしたエドが庶民の私にペコペコしているのだから注目の的になっている。


「ちょっと、エドもクリューもやめてよ。なんだか私が謝らせているみたいじゃない」

『でも最初が肝心だって、ベラが言ってたよ。結婚するときはプロ―ポーズの時からどっちが上かわからせておかないといけないって』

「え~、いつそんなこと言ったのよ」

『井戸端会議で話してるのを聞いたんだ』

『クリューが時々いなくなるのは、ご近所さんの噂話を聞きに行ってたからなの?』

『井戸端会議を馬鹿にしたらいけないよ。あれって結構役にたつこと話しているんだよ』


 まさか妖精が、噂話好きだったとは…。


「それよりプロポーズってどういうことなの? エドはアネットと結婚するんじゃないの?」

「アネットと結婚するのに君にプロポーズするはずないだろ」

「でもアネットと婚約していたし…」

「偽装婚約だって話したよね」


 確かにそれは聞いた。でも……。


「この間アネットは結婚するって話をしに来たの」

「相手は私だと言ったのかい?」

「相手のことは言わなかったわ。エドが婚約者だったから、わざわざ聞かなかったの」

「アネットの結婚相手は私ではないよ。同じ学院に通っていた二つ上の先輩でロイド・マーティンという人だ。その人と一緒になりたいから、どうしても貴族になりたかったそうだ。ただ相手は子爵家の三男坊で、侯爵令嬢の相手としては格が違うから、防波堤として私が効力していたんだ」


 庶民だったアネットには子爵家の三男坊とはいえ身分が違うために嫁にはなれず、なんとか貴族になれても今度は侯爵令嬢という身分が高いために男爵家の三男坊の嫁になるのは難しかったってことなのね。なんだかとても皮肉だわ。身分が低くても高くても駄目だなんて。


「でも身分はこれ以上どうしようもないのに、よく結婚を許してくれたわね。私の両親はそういうのとても気にする人たちなのに。それとも実の娘はやっぱり可愛いから甘くなったのかしら」

「いや、あの人たちはそう甘くないよ。私と結婚させようといろいろと手を回してきてたからね」


 エドがうんざりとした顔をしている。相当大変だったようだ。


「じゃあ、どうやって認めさせたの?」

「君がこの間言ってただろ。婚約は破棄されたら結婚相手を見つけるのは困難だって。それを利用させてもらったんだ」


 婚約破棄するためには理由がいる。自分以外の男性と二人で会っていたと言うだけでも婚約破棄の理由としては認められるそうだ。

 エドはアネットとロイドがデートしていたことを理由に婚約破棄を申し立てたそうだ。もちろん、これはすぐに認められることになった。ロイドもアネットがあっさりと罪を認めたからだ。

 ロイドは醜聞が響いて地方に飛ばされることになってしまったが、これも計画のうちだったらしく、アネットとロイドは結婚してしばらくはのんびりと暮らすのが楽しみだとか言っているそうだ。


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