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55 幼なじみーサラside

 一目でロックだとわかった。

 どれほど変わろうと私はロックを見間違えたりしない。

 まさかロックが私たちの両親と同じ病気になってしまうなんて思わなかった。しかもあの時と同じで薬が手に入らない。

 王都にいるのに…薬が手に入らない? 両親の時は仕方がなかった。私たちの両親だけでなく、薬が手に入らなくて亡くなった人は多くいたから、悲しいけど諦めがついた。でも今は違う。確かに薬が手に入らないのは同じかもしれないけど、この街に住む貴族の人は手に入れているのだ。

 ルウルウ風邪になっていない貴族が買い占めたために手に入らないなんて酷い。

 青い顔とやつれたような顔。まだ幼さを残していたころとはあの頃の面影はない。別れていた年月を感じさせられた。

 まさかこんな形でロックと再会するとは思わなかった。



 アンナのおかげで薬が手に入った時は思わず涙がでた。この薬を手に入れるためにアンナが嫌な思いをしたことは彼女の顔を見ればすぐにわかった。それでも私はアンナに貴族の知り合いがいてくれたことを神に感謝した。

 だって、アンナがただの庶民だったらきっとこの薬は手に入らなかった。そしてロックは私たちの両親と同じように亡くなっていただろう。

 ルウルウ風邪になっても確かに助かる人がいるけど、ロックのような高熱が出て意識が亡くなる人は薬がないと助からないことを私は知っていた。だからロックを見た時はもう助かることはないと絶望した。

 せっかくまた会えたのに話もできずに終わってしまうの?

 でも私の知らない間にどこか違う場所で亡くなるよりはいいのかもしれない。そんなことを考えていた時にアンナが薬の袋をもってきてくれたのだ。



 ロックが目覚めた時、私はウトウトしていた。


「…サラ、サラなのか?」


 掠れた声だった。私は彼に水を与えた。ロックは一口飲むと起き上がろうとする。


「まだ起き上がるのは無理よ」

「これは夢なのか? それとも天国? 俺は死んだのか?」

「貴方は死んでいないわ。薬を飲んで助かったのよ。ルウルウ風邪にかかってるってわかってたのにどうして診療所にいかなかったの?」


 ロックの両親だってルウルウ風邪で亡くなっているのだから、症状でわかっていたはずだ。だから思わず怒ってしまう。


「俺は助かったのか。薬が手に入らないことは聞いていたから、診療所に行っても無駄だと思って行かなかったんだ。そうかやっと薬が手に入るようになったんだな」


 ロックはホッとしたように息をつく。でも残念ながら薬の入手はまだ難しい。


「ううん、まだ庶民には手に入らないの。貴方に使ったのは貴族から分けてもらったものよ」

「き、貴族だって? いったいどうやって手に入れた?」


 ロックが驚くのも無理はない。貴族が大事な薬を私たち庶民にくれるなんて奇跡に近い。


「さあ、詳しいことは聞いていないからわからないわ。それよりお腹はすいていない? おかゆでも作りましょうか?」


 ロックは詳しいことを聞きたそうだったけど、おかゆを持ち出すとどうでもよくなったようだった。


「おかゆ? 懐かしいな。この店に来たのは死ぬ前にうどんを食べたかったからだ。死ぬ前に食べたいものは高価な肉でもなく故郷の味だったよ。それにしても、ここでサラに会えるとは思わなかったな」


 どんな高価な食事も故郷の味にはかなわないのかもしれない。

 聞きたいことは沢山あった。どうして私を置き去りにしたのかとか。この街に帰って来たのに何故会いに来てくれなかったのかとか。

 でも今はロック元気になってもらうことの方が大事だ。薬で熱は下がったけれど、まだ安心はできない。

 ルウルウ風邪は一度かかるとその年はもうかからないけど、完全に治るまで油断してはならないのだ。

 ロックはおかゆを美味しそうに食べて、私が渡した薬を飲んでからまた眠った。

 彼の寝顔を眺めながらホッと息をつく。私の態度におかしいところはなかったよね。

 ロックが私のことを妹のようにしか思っていないのはわかっている。もしかしたらもう結婚もしているかもしれない。それでも彼が生きていてくれて本当によかった。



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