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28 運命ーベッテンside

 ベッテン・アルヴェルトは窓から二人の少女が帰っていくのを眺めていた。その後ろを歩いているのは商会の人間だ。『アルヴァー』で売っている古着を着ているので、上手く人ごみに紛れ込めている。


「あれほど探していた人物に、偶然ここで会えるとはわからないものだ。サルサもそう思わないか?」

「はい。運命のようなものを感じます」

「運命か…」


 ベッテンはエドモンド・ルーカスに頼まれて、アンナを探していた。十四年も娘として育てたのに、あっさりと捨てたセネット侯爵家には驚いたものの、やはりという気がした。

 アンナは見た目もだが、内面も侯爵家の人間とは思えないものを感じていた。生まれた時から侯爵家で育てられたのに、傲慢なところは一つもなく、彼女の周りの空気は森の中にいるかのように清々しい。


「エドモンド様に知らせるのですか?」

「ふむ、とても心配しておられたからな」

「ですが、彼女はもうエドモンド様の婚約者ではなくただの庶民です。このまま知らない方がいいのではないでしょうか」


 サルサの言うように、このまま彼女の存在をないものにした方が、二人のためなのかもしれない。年をとっていてもベッテンにはどちらが正しいのか判断できない。


「それは私たちが判断することではない。彼らが決めることだ。私が今日ここに来てアンナ様を見つけたのは偶然が重なったからだ。見えない力が働いているのだろう。だとすれば私が黙っていようとエドモンド様はアンナ様の居場所を知ることになる。ならば恩を売っておいたほうが良い。サルサもそう思うだろう?」

「…はい。その通りでございます」


 ベッテンはアンナが庶民として暮らせるのか心配だった。十四年も貴族として暮らしていて、いきなり庶民の家族と一緒に暮らせるだろうか? もしその家族がアンナを嫌って追い出していたら?

 エドモンドに頼まれたからだけではなく、ベッテンはアンナを手助けするつもりでいた。貴族として育ったアンナはお金を稼ぐ方法も知らないだろうから、見つけることができたらアルヴェルト商会で雇うつもりだった。

 どうしてそこまでのことをするのか。ベッテンはアンナに助けられたことがある。

 セネット侯爵家で大失敗をした息子を助けてくれたのだ。もしあの時アンナが助けてくれなければ息子の命はなかっただろう。そしてアルヴェルト商会もどうなっていたことか……。

 アルヴェルト商会は大きな商会だが貴族ではない。貴族の胸一つでどうにでもなるのだ。

 もちろん何もしていないのに命を取られたりはしないが、少しの失敗で破滅することになる。

 もしあの時、アンナではなく本当の令嬢だったら…そう思うと、妖精の取り換えっ子はベッテンにとっても運命だったのかもしれない。


「どうして仕事を紹介しなかったのですか?」

「どうしてだろうな。今はその時ではないと感じたからだとしか言えない」


 アンナは空間魔法を使えた。さすがに驚いた。この魔法を持っているだけでもいくらでも仕事がある。ただ変な奴らに利用される恐れもある。だから尾行させた。何かあった時は助けなければならないからだ。


「ビルが戻ったら知らせてくれ」

「監視をつけますか?」

「そうだな。エドモンド様も知りたいはずだ。しばらくは監視が必要だ」

「承知しました」


 サルサが去ると箱の中からあるものを取り出す。アンナが作ったスコーンだ。この箱には魔法がかけられていて時間が経たない。

 エドモンド様からいただいたスコーンはいつか息子に食べさせようと思っている。

隣国で暮らしている息子は二年後に戻ってくる。

 その時にアンナの状況が悪くなっていたら、息子はショックを受けるだろう。だから監視は必要だ。エドモンドのためだけではなく自分たちのために…。




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