表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

05



 目が闇に慣れ始めた頃、薄墨色の淡い空の時間が長くなってきた。

 寒さも緩んで極夜の終わりも近いみたい。


 静かだった屋敷や町にも少しずつ音が戻ってくる。

 

 この世界には音楽なんてないのかと思っていたけれど、バイオリンのような音がする。


 この世界の人は言葉なんて発しないのかと思っていたけれど、話し声も微かに聞こえてきた。



 もしかして極夜に歌ったりするのは禁忌だったのだろうか。

 この世界の信仰も知らないし冒涜したわけではないことは伝わっているだろうか。


 

 少し明るくなった部屋でようやく、私は白いワンピースを着ていたのだということを知る。

 そして扉が開けば私を毎日抱きしめてくれていた彼もまた、白いスーツを纏っていた。


 彼の瞳と胸元に飾られている花は夜明け前の薄紫で、

 差し出された花を受け取りお礼にキスを返せば、

 予想通り、いつもとは違う愛情もプレゼントされた。


 初めて聞く彼の吐息まじりの声は切なかった。

 暫らく使ってなかった声帯から音を搾り出して、うわ言のように擦れた声で何度も何度もミワと呼ばれ

 私の上で幾度となくのぼせ果てていく姿は水鳥のように美しく、舐めるような視線は艶やかだった。


 

 気絶するように意識を失い、起きた時にはアパートの部屋に居た。

 はだけた白いワンピースと降りそそがれたようなキスマークの痕もそのままに。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ