既視感の正体
あれから暫く経ちエリーゼは社交界デビューを果たした。彼女は顔立ちが綺麗だから寄ってくる男も多かったらしい。中には既に婚約者がいる男性もいた。その為女性陣からの評判が悪く目の敵にされることが多くなってきた。
そして私にも彼女からの影響を受けることになってしまった。それは何かというとお父様の私への態度だ。
日に日に彼女を優先するようになり私の意見など殆ど蔑ろにされるようになった。
昨日遂に私が大事にしてる昔お母様が私にくれた誕生日プレゼントをくれと言い出したのだ。
勿論私は拒否した。大事なものだ、そうやすやすと渡すわけがない。
そういうと彼女は父に泣きついた。非常識な女だ。あらやだ、口が滑った。話を戻そう。
それを聞いた父は私にそれを渡すように言ってきたのだ。こいつも非常識だ。…あ、また口が滑った。…それで父に事情を説明して何とか彼女に渡すことは回避できた。
…それにしてもこの父親とんでもないの連れてきたね。初めて会ったころはまだ分からなかったけど一緒に過ごすたびに本性が分かってきた。本性というか何か… 多分あの子はいい意味でも悪い意味でも素直なんだろう。自分が正しいと思ったことは絶対に曲げない。ある意味面倒くさいタイプの女の子だ。
そして今
「…え?」
そういった私の胸部にはナイフが突き刺さっていた。正直今の状況を呑み込めていないが、目の前にいる彼女が刺したのだろう。
「どう、して…。」
激痛に耐えながら聞くと彼女は言った。
「だってお姉様は悪者なんでしょう?お父様から聞いたんです私。お父様と私のお母様は思い合っていたのに家同士の政略結婚で泣く泣く分かれたんだって。そしてお父様とお姉様のお母様は結婚した。
つまり愛する二人を引き離したのは貴方のお母様!そしてその人の娘であるお姉様も同じ。結果的にお姉様は今の二人の幸せの邪魔者にして悪者ってわけだから
私が排除しに来たの!」
そう彼女は自信に満ちた正義感たっぷりの笑顔で言った。
その結論に至ったのは彼女の性格に起因しているのだろう。私は恐らくもう直ぐ、いや確実に死ぬだろう。出血が多い。
私は思う、どうしてこうなってしまったのか、どうして私がこんな目に遭わなければいけないのか。
そんな事を考えているが、こんな状況の中、何か違和感を感じている私はおかしいのだろうか。
この違和感を言葉にするなら…そう、既視感。まるでこんな目に遭うのが初めてではないかのように。
その時床に転がっている自分の血で濡れたナイフを見て頭の中に流れてきた膨大な量の情報、いや記憶を見て思い出した。
この世界の時間が繰り返されている事を
その元凶ともいえる人物は幼馴染であるアディスだ。そして時間を繰り返そうとする理由が私の死。
彼は何度も見てきたのだろう、私が死ぬところを。壊れなかったのだろうか。私なら正気ではいられない。
って、今更遅いか。あぁ意識が朦朧とする。
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