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第94話 帰宅

「……嵐のような方でしたね」

「あのババアは昔からああなんだよ」

「本当にお金を借りにきたんですかね? すごい技術を持たれてるみたいですし、もしかしたら近頃起こってる事件のことかも」


 タイムの言葉を聞き、サリッサを知る三人が顔を見合わせ、


『考えられない』

「そんな声を揃えて……」


 一言一句意見が一致した。


 あの人が自発的にそんな真似をするとは到底思えない。仮にそんな行動を取る事があるならば、何かしら自分にメリットが発生するのだろう。


「そう言えば自己紹介がまだだったわね。今更何か変な気がするけど、カーネリアよ。この子みたいに受付してるけど実は副ギルドマスター何てことはないから安心して頂戴。私はれっきとした受付だから」

「私が人を騙してるみたいな言い方止めて貰えませんか、私だって受付してる時はれっきとした受付です」

「そうやって受付を舐めてかかる冒険者をこっそり査定してるんでしょ? 性格悪いわよね」

「私をおとしめて何が目的です?」

「あっ、否定しないんだ。ほんとにやってるのね……」

「……あまりにも目に余る時は少し」


 若干引いてるカーネリアに対し、視線をそらしながらアンゼリカさんが答える。


「それで、そっちの子たちは?」


 カーネリアに促され、俺達は各々自己紹介をしていく。


「えっ!? そっちの子が姉なの!? 若返り!? ちょっとその話詳しく教えてくれない?」

「やたら食いついたな……でも悪いが俺達にも良くわからないんだよ。今の所事故としか言いようがない」

「先程のサリッサさんならなにかご存知なのでは?」

「それは……それは、うーん」


 カーネリアが何やら考え込む。恐らく話を聞きに行った際のメリットとデメリットを考えているのだろう。目先の餌につられて一杯一杯になっているようだ。だが、あのババアに相談してメリットが勝つ事など、天地がひっくり返るでもしないとありえまい。傍で見ているアンゼリカさんも俺と同じ考えのようである。

 

「それにしてもギルマスがいないのであれば出直すしかありませんね」

「じゃあもう用事は良いのかい?」

「ええ、私も仕事ばかりしているわけではありませんから。皆さんはどうされますか?」


 この後の予定をアンゼリカさんが尋ねてきた。そもそも予定が無かったから、折角だからと付いてきたのである。その予定が消えてしまえばこの後にすることなど無い。

 ただ、すでに結構良い時間である。ここからまっすぐエドガーの屋敷へと戻ったとしても、日が沈みかけた頃だろう。


「どうするも何も、そろそろいい時間だぞ? あんまり遅くなるとエドガーから小言とか言われるんじゃないか?」


 まるで子供に戻った様な心配事ではあるが、王都にいる間はエドガーが雇い主とも言える。特に理由もなくあいつの機嫌を損ねることはない。


「私はもっと色んな所を見に行きたいんだけどなぁ」

「この規模の街を見て回ろうとすれば数日必要になると思いますわよ? これから見て回ろうとしてもきっとこの近辺の鍛冶屋が限界ですわ」

「うっ、それはそそられないかも」


 物足りない様子のリユゼルをルミナが嗜める。


「ならここは素直にエドガーのところへ戻るとするさね」


 その後、俺達は大人しくエドガーの家へと戻ることにした。その戻った先で、


「何でババアがここに居るんだ」


 世間の狭さを思い知らされるのだった。

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