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第91話 不在

 ギルドの中はアンゼリカさんの言ったとおりの情景が広がっていた。まさにパニカムギルドの拡張版と言った内装だ。異なる点を挙げるとすれば、酒場が二階まで続いている点だろうか。正直ここまで広いと、ギルドの方がおまけに見えてきて仕方がない。


 そんな中、アンゼリカさんは勝手知ったる何とやらと、淀み無く進んでいく。俺達もそんなアンゼリカさんの後へ続いた。

 アンゼリカさんは受付へやってくると、


「こんにちは、お久しぶりです。カーネリアさん」

「アンゼリカ……良く来たわね。話は聞いたわ。あなたが無事で良かった」


 カーネリアはアンゼリカさんの手を取り、少し涙ぐんでいた。受付のカウンターを挟んでいなければ、抱きしめていそうな勢いだ。

 そんなカーネリアの熱に当てられたのか、アンゼリカさんも少し涙ぐんでいる。もしかすると、アカンサスであったことを少し思い出したのかもしれない。

 二人を見てミントとリユゼルの二人も少し瞳が潤んでいた。タイムとルミナの二人はギルドの内部を物珍しそうに見て回っている。空気を読んで押し黙っている、俺と姉さんが少しマシに思える。


「ごめんなさい。それで今日はどうしたの?」

「それがアカンサスで起こった事件の顛末を説明するよう、陛下より直々に命令を拝命致しまして……」

「あれが居なくなってもあなたは良いように使われてるわけね……」


 カーネリアは涙を拭い、呆れながら微笑んだ。


「ここへは挨拶と、ここ最近の事件の情報交換が出来ればと思い立ち寄らせて頂きました」

「そう、でも生憎ここの責任者は今日は不在なのよ。きっと明日には戻ると思うのだけど」

「もしかして、例の噂の件でしょうか」


 アンゼリカさんは言いにくそうに言葉を濁す。


「……例の噂? ああ、もしかすると四剣のパーティーのこと? ええ、そうよ。その真偽を確かめるのも目的の一つだったはずよ」


 どうやらここの責任者はオレガノとは対象的に、自分で進んで動く人間らしい。だが組織のトップに立つ人間ならオレガノの方が正しいのではないだろうか。この状況下で組織のトップがおいそれと留守にするなど正気とは思えない。


「いいのかい? 組織のトップがそんなホイホイ留守にして」


 姉さんも同意見のようで、二人の会話に口を挟む。


「あの人の場合は事情が少し違うんですよ。王都の、いえ、この国を冒険者ギルドのトップに立つあの人はギルド間を転移できるんです」

「この国の冒険者ギルドのマスターは長命種のハイエルフなのよ」

『はっ!?』


 二人のその話を聞き、俺達は絶句するのだった。

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