第90話 グロリオーサのギルド
クロッカス商会を後にし、俺達は冒険者ギルドへと向かう。その道すがら、アンゼリカさんが大まかにこの王都の説明をしてくれる。
色々な場所へ出張させられていたと本人が言うだけあって、この王都に関してもそれなりに知っている様だ。
話しによれば、王都グロリオーサは王城を中心として、円環状に街が発展しており、空から見下ろした時まるで年輪のようになっているそうだ。その為、いつの頃からかこの王都に住む人間は、城を起点とし、一つ目の輪を一層、二つ目の輪を二層と言った呼び方をするようになった。王都グロリオーサは王城と七層からなる城下町で形成された街なのだそうだ。
王都の冒険者ギルドは、そんな街の北部、三層目に位置している。冒険者ギルドがあるせいか、その北部は鍛冶屋や道具屋と言った、冒険者をターゲットとした店舗が目立つ、所謂職人街とでも呼べる場所らしい。
「王都のギルドってどんなところなんですか?」
ミントの質問に、アンゼリカさんは少し考え込んでから、
「どんなところ……そうですね。規模は異なりますけど、パニカムにある冒険者ギルドとあまり構造は変わりません。この王都のギルドを参考に各町のギルドが造られたせいですから、この王都のギルドに各町のギルドが似ていると言った方が正しいのかもしれません」
「と言うと、受付に酒場があるって事でしょうか。あれ? でもアカンサスはそうじゃありませんでしたよね?」
「恥ずかしながら、侯爵とはあまり折り合いが良くありませんでしたから……」
「ソーワートの侯爵様は、冒険者嫌いで街の人間には有名だったからね」
アンゼリカさんは本当に気まずそうにそう答え、それにリユゼルが補足する。
今更ではあるが、今になって嫌な話を聞いた。先に言えよ。
「ソルトさんはそんな嫌な顔されませんでしたよね?」
「状況が状況だったからな、逆に言えばその状況に助けられたわけか……」
平時に会っていたらどうなっていたことやら……よそう、今となってはありえないことだ。
嫌な考えしか浮かんでこず、俺は頭を振ってその考えを頭から追い出す。
「冒険者ギルドの造りが違うってのが侯爵が冒険者嫌いってのにどう繋がるんだい?」
「……その、冒険者の方はお酒を嗜まれる方が多いので、酒場が併設されていると空いた時間はギルドに留まってくれる方が多くなるんです。そうなると緊急の依頼であっても誰かしらすぐに引き受けてくれますから」
「なるほどね」
緊急の依頼をすぐに対応して貰えれば、必然的に住民もギルドを頼るようになる。そうなればギルドの発言力も徐々に増していくというわけだ。
酒場が併設されているのにも意味があったんだな。
冒険者嫌いの侯爵はそれを阻止したいから、ギルドの内装に口を出したと、そう言うことらしい。
そんな話をしているうちに、冒険者ギルドが見えてきたらしく、「あ、あそこですよ」とアンゼリカさんが教えてくれた。なるほど、確かに大きい。外観だけで言えば、パニカムのギルドの数倍はある。見れば仲間と騒ぎながら建物に入っていく、ガラの悪そうな連中の姿が見えた。
「まさに絵に描いたような冒険者ですわね」
「……変な先入観は止めろ」
それを見て辛辣な感想を述べるルミナに対し、軽く注意しながら俺達は冒険者ギルドの建物へと入った。




