第89話 王都のギルドへ
「うぅ、酷い目にあいました……」
タイムのやつが項垂れたまま、空中をさまよっている。エドガーの説教の後、好きにして良いとルミナともどもカナリアに引き渡された。その後、本当に好き放題やられていたのだから無理もない。ルミナのやつは隅っこで「もうお嫁に行けませんわ」などと呟きながら、膝を抱えている。
「さて、必要なことはもう無いかね?」
そんな二人の様子は視界に入らないかの様に、エドガーがカナリアに問いかける。カナリアはどことなく恍惚の表情を浮かべながらため息を付いている。
「ええ、十分よ。明日までだったわね。任せて頂戴」
「ではすまないがよろしく頼む」
エドガーはそう言うと、持ってきた手荷物をすべてカナリアへと受け渡す。
「ところで誰がどれを着るかもう決まってるのかしら?」
「その辺りは君の一存に任せるよ。君の思う様にやってくれたまえ」
エドガーがそういった直後、カナリアが一瞬俺の方へと目を向け「わかったわ」と頷いた。
何だ今のは、とても嫌な予感がするんだが。
「……男物だよな?」
不安に駆られ問いかける俺に対して、カナリアはニコニコと笑みを返すだけだ。
「待て待て、公式の場だぞ? 冗談だよな?」
「安心したまえ。あれはなかなか度量の広い男だ」
「その言葉のどこに俺が安心できる要素があるんだよ……」
「少なくともそれで首を刎ねられるようなことはないだろう」
そんな悪乗りで首を刎ねられたらたまったものではない。エドガーのこの様子、冗談を言っているつもりではなさそうだから余計に困る。
「やぁねぇ冗談よ。ちゃんと男物を用意しておくわ」
「本当だな?」
「ええ、信じて頂戴。じゃあすぐに取り掛かるから、悪いけど」
「ああ、今日のところはこれで帰るとしよう」
そう言ってエドガーはソファーから立ち上がる。
「明日の昼には終わってるだろうから取りに来て頂戴。その時に品評会の詳細も教えるわ。リナリア、ちゃんとくるのよ?」
「……くっなぜ私が」
「私が責任を持って連れてこよう。そちらの二人も含めてね」
何やら心に傷を負ったらしいタイムとルミナの二人を指し、エドガーが答えた。
「さて、それでは失礼するとしよう。私の要件は終わった。後は自由にしてもらって構わない。君達はどうするかね?」
「私は折角ですから報告も兼ねて王都の冒険者ギルドへ挨拶へ行こうと思います」
アンゼリカさんのその言葉を聞き、俺と姉さんは互いに顔を見合わせる。
「折角だしあたしらもそれに付いていくさね」
「だな。王都のギルドってのも見てみたいしな」
「私もお姉ちゃんに付いていきます」
「じゃあ私もそうしよっかな。一人で居てもつまらないしね」
「ならばーー」
「リナリア、君は駄目だ。王都に来たのならば君はやるべきことがあるはずだ。私についてきたまえ」
俺達に続こうとするリナリアをエドガーが引き止め、俺達はそんなリナリアを残し、王都の冒険者ギルドへ向かうことにした。




